オリジナルTシャツを作るとき、デザインや生地と同じくらい悩ましいのがサイズ展開の決め方です。S〜XLまでそろえれば安心に見えますが、サイズを増やすほど1サイズあたりの枚数は少なくなり、売れ残るサイズも出やすくなります。この記事では、Tシャツのサイズ展開をどう決めるか、そして在庫を抱えにくい枚数の配分をどう考えるかを、発注前に決めておくべき順番に沿って整理します。
サイズ展開は「何サイズ作るか」と「各サイズ何枚か」の2段階
サイズ展開の話は、実際には2つの判断に分かれます。
- 展開数:S・M・L・XLのうち、どのサイズを作るか
- 配分:総枚数を、各サイズに何枚ずつ割り振るか
先に展開数を決め、その後で配分を考えるのが一般的です。展開数を広げるほど配分の判断が難しくなるので、まずは「本当にそのサイズが必要か」を絞り込むところから始めます。
展開数を決める3つの視点
1. 誰が着るのか(ターゲットの体格と性別)
男女兼用で売るのか、メンズ中心・レディース中心なのかで、必要なサイズの幅は変わります。男女兼用の場合は、女性がSやMを、男性がLやXLを選ぶことが多いため、展開の幅が広くなりがちです。一方、ターゲットがはっきりしているブランドであれば、3サイズ程度に絞れることもあります。
2. どんなシルエットにするのか
ゆったりとしたシルエットのTシャツは、1つのサイズでカバーできる体格の幅が広くなるため、展開数を少なめにしやすい傾向があります。反対に、身体に沿うシルエットはサイズが合わないと着づらいため、細かく刻む必要が出てくることがあります。デザインの段階でシルエットの方向性を決めておくと、展開数の判断がしやすくなります。
3. どこで売るのか
イベントや店頭で試着して買える場合と、ネット販売のみの場合とでは、サイズの選ばれ方が変わります。ネット販売では、購入者が自分のサイズに迷いやすく、サイズ表の分かりやすさが売れ行きに影響することもあります。販路によって、展開数を広げるか絞るかを考えましょう。
展開数を増やすとかかるコストと手間
サイズを1つ増やすことは、単に枚数が分かれるだけではありません。次のような費用や手間が増えることが多いです。
- グレーディング:基準サイズの型紙から、他サイズの型紙を展開する作業。フルオーダーの場合、サイズが増えるほど作業が増えます。詳しくはパターン(型紙)の作成費用とグレーディングで解説しています
- サイズごとの最低枚数:工場によっては、1サイズあたりの最低枚数を設けていることがあります。総枚数が同じでも、サイズを増やすと条件を満たしにくくなる場合があります
- 副資材の管理:サイズネームや品質表示など、サイズごとに用意するものが増えます。付属についてはアパレルの副資材とはを参考にしてください
- 検品・出荷の手間:サイズ違いの混入を防ぐ確認や、在庫の管理が細かくなります
既製のボディにプリントする「ありボディ」の場合は、ボディ側にすでにサイズ展開があるため、グレーディングの費用はかからないのが一般的です。ただし、選べるサイズはボディのラインナップに左右されます。違いはありボディとフルオーダーの違いで比較しています。
在庫を抱えにくいサイズ配分の考え方
展開数が決まったら、次は配分です。ここで「全サイズ同じ枚数」にしてしまうと、売れるサイズが先に品切れになり、売れにくいサイズだけが残るという状態になりやすくなります。
中心のサイズを厚くし、端のサイズを薄くする
一般的には、展開の中央にあたるサイズが最も売れやすく、両端のサイズは少なめになる傾向があります。男女兼用のTシャツであれば、MとLを中心に厚めに作ることが多いです。ただし、どのサイズが中心になるかはターゲットやシルエットによって変わるため、あくまで出発点の目安として考えてください。
配分の例(100枚・4サイズの場合)
考え方をつかむための一例として、100枚を4サイズに分ける場合のパターンを並べてみます。実際の配分は、販売先や過去の反応に合わせて調整してください。
| 配分の考え方 | S | M | L | XL | 向いている場面 |
|---|---|---|---|---|---|
| 均等に分ける | 25 | 25 | 25 | 25 | 着る人が決まっているスタッフTシャツなど、サイズを事前に集計できる場合 |
| 中央を厚くする | 15 | 35 | 35 | 15 | 男女兼用で、購入者の体格が読めない販売用 |
| 大きめに寄せる | 10 | 25 | 40 | 25 | ゆったり着るシルエットで、大きめを選ぶ人が多いと見込む場合 |
スタッフやチームで着るTシャツのように、着る人が決まっている場合は、配分を予想する必要はありません。事前にサイズを集計して、その枚数をそのまま発注するのが確実です。進め方はスタッフTシャツを作るときの進め方で紹介しています。
最初のロットは「反応を見る配分」にする
販売実績がない最初のロットで配分を完璧に当てるのは難しいものです。最初は中央を厚くした配分で作り、売れ行きを見ながら追加生産で調整する、という進め方のほうが在庫の偏りを抑えやすくなります。在庫全体の考え方はアパレルの在庫リスクを抑える生産計画で詳しく書いています。
サイズ表(寸法)を決めるときのポイント
S・M・Lという表記は、ブランドやメーカーによって実際の寸法が異なります。そのため、サイズ展開を決めるときは、表記だけでなく各サイズの寸法もあわせて決めておく必要があります。Tシャツで一般的に示される寸法は次のとおりです。
- 着丈:肩の一番高いところから裾まで
- 身幅:脇の下の位置での身頃の幅
- 肩幅:左右の肩の縫い目の間
- 袖丈:肩の縫い目から袖口まで
寸法を決めるときは、手持ちの着心地がよいTシャツを採寸して基準にする方法がよく使われます。仕様書への書き方は縫製仕様書の書き方を参考にしてください。また、サンプルができたら、想定する体格の人に実際に着てもらい、基準サイズだけでなく端のサイズも確認できると安心です。サンプルで見るべき点はサンプル制作の費用と期間でまとめています。
ネット販売ならサイズ表の見せ方も準備する
ネットで販売する場合、サイズの選び間違いは返品や交換につながり、手間とコストが増えます。購入者が迷わないように、次のような情報を用意しておくとよいでしょう。
- 各サイズの実寸(着丈・身幅・肩幅・袖丈)
- 着用者の身長と着用サイズの例
- 「ゆったりめ」「ジャストサイズ」などのシルエットの説明
- 洗濯による縮みの可能性がある素材の場合は、その旨の注記
こうした情報は、生産前の寸法決めの段階で整理しておくと、販売ページを作るときにそのまま使えます。
まとめ
- サイズ展開は「何サイズ作るか」と「各サイズ何枚か」の2段階で考える
- 展開数は、ターゲット・シルエット・販路の3つの視点で絞り込む
- サイズを増やすと、グレーディングや管理の手間、サイズごとの最低枚数の影響が出やすい
- 配分は中央のサイズを厚くするのが出発点の目安。最初のロットは反応を見て、追加生産で調整する
- 表記だけでなく寸法まで決め、ネット販売ならサイズ表の見せ方も準備しておく
何サイズ・何枚で作るのが合っているか判断がつかない場合は、想定する販路とターゲット、総枚数の目安をOEM先に伝えて、サイズ展開と配分のパターンを相談してみると比較しやすくなります。