アパレルの生産で「副資材(ふくしざい)」という言葉が出てきて、何を指すのか分からないまま話が進んでしまうことがあります。アパレルにおける副資材とは、生地(主資材)以外で製品を成り立たせるために必要な材料の総称です。Tシャツのように構造が単純なアイテムでも、縫い糸・肩テープ・織りネーム・洗濯ネーム・下げ札・個包装まで、意外と多くの副資材が使われています。そして生産の現場では、「生地は揃ったのに副資材が届かず縫製に入れない」という形で、副資材が納期を左右することが少なくありません。ここでは、副資材とは何か、Tシャツを作るときに必要になる副資材の一覧、そして納期とロットにどう関わるのかを整理します。
副資材とは何か
アパレルの材料は、大きく「主資材」と「副資材」に分けて呼ばれることが一般的です。主資材は製品の本体になる生地のことで、Tシャツなら身頃と袖に使う天竺などの編み地がこれにあたります。副資材はそれ以外の材料すべてで、糸、テープ類、ネーム類、下げ札、包装材などが含まれます。布帛のシャツやジャケットではボタン・ファスナー・芯地といった副資材が多く登場しますが、Tシャツでは本体に付く付属は少なめで、その代わりに表示や包装まわりの副資材が中心になります。
副資材は一つひとつは小さく、単価も低いものが多いのですが、「どれか一つでも欠けると製品として完成しない」という性質があります。洗濯ネームがなければ出荷できず、下げ札がなければ店頭に並べられません。この「小さいのに欠かせない」という点が、副資材を軽く見ると後で困る理由です。
Tシャツを作るときに必要になる副資材の一覧
Tシャツ1型を作るときに登場する副資材を、役割と「発注者側で決めておくこと」とあわせて並べます。すべてが必ず必要というわけではなく、販売の形によって省けるものもあります。
| 副資材 | 役割 | 決めておくこと |
|---|---|---|
| 縫い糸 | 縫製に使う糸。生地の色に合わせるのが基本で、あえて配色にすることもある | 糸色を生地に合わせるか、配色にするか |
| 首リブ用の生地 | 首まわりを仕上げるリブ編みの生地。本体と一緒に手配されることが多いが、本体と別の素材にする場合は別途手配になる | 本体と同じ生地か、別のリブ生地か |
| 肩テープ(衿ぐりテープ) | 首の後ろから肩にかけて縫い込むテープ。首の伸びを抑え、内側の始末をきれいに見せる | 付けるかどうか、幅、色 |
| 織りネーム(ブランドネーム) | 首の後ろなどに付くブランドのタグ | デザインデータ、サイズ、折り方、付け位置 |
| 洗濯ネーム(品質表示) | 混率・洗濯表示・表示者名など、法律で求められる表示 | 表示内容、付け位置、サイズ表記を兼ねるか |
| サイズネーム・サイズシール | サイズの表示。織りネームや洗濯ネームに含めて省略することもある | 別付けにするか、他のネームに含めるか |
| 下げ札と取り付け具 | 価格や品番を示す紙札と、それを付ける留め具や紐 | デザイン、紙の種類、付け位置 |
| 個包装の袋・台紙 | 1枚ずつ入れる袋と、たたみ形を保つ台紙 | 袋のサイズ、たたみ方、入り数 |
| 外装の段ボール・ラベル | 出荷用の外箱と、品番・サイズ・入り数の表示 | 入り数、外箱の表示内容 |
このうち織りネーム・洗濯ネーム・下げ札の3つは、ブランドとして売るなら避けて通れない副資材です。作り方や表示のルールはTシャツのタグ付け替えの記事と洗濯表示の作り方の記事で詳しく書いています。
副資材が納期を左右する理由
手配先が生地や縫製工場とは別になることが多い
生地は生地屋、織りネームはネームの製作会社、下げ札は印刷会社、袋は包材の会社、というように、副資材はそれぞれ別の専門業者から調達されることが一般的です。OEM会社に頼めばまとめて手配してもらえることが多いものの、その裏側では複数の業者への発注と納期管理が動いています。どれか一つの業者で遅れが出ると、それだけで縫製の開始や出荷がずれることになります。
オリジナルで作るものは製作期間がかかる
既製の縫い糸や袋は在庫から短期間で届くことが多い一方、ブランド名の入った織りネームや下げ札は、デザインの確定、校正(見本の確認)、本製作という手順を踏むため、ある程度の日数を見ておく必要があります。とくに織りネームは、色や織り方の見本を確認してから量産に入ることが多く、確認のやり取りが一往復増えるだけで着手が後ろにずれます。
表示の内容は「決まらないと作れない」
洗濯ネームは、生地の混率や洗濯方法が確定しないと内容を決められません。生地を変更したり、サンプルの洗濯試験の結果を見て表示を見直したりすると、そのたびに洗濯ネームの製作がやり直しになることがあります。生地の確定が遅れると、その分だけ洗濯ネームの手配も遅れる、という連鎖が起きやすい部分です。
縫製の工程に「入る」タイミングが決まっている
織りネームや洗濯ネームは縫製の途中で縫い込まれることが多いため、縫製が始まる前に工場に届いていなければなりません。一方、下げ札や袋は仕上げ・検品のあとに使うため、縫製中に届けば間に合うことが多いです。どの副資材がどの工程で必要かによって「いつまでに届いていればよいか」が違い、この順番を把握していないと、ネームが届かず縫製の手が止まる、ということが起こります。全体のスケジュールの組み方はTシャツOEMの納期の記事で整理しています。
副資材にも最低ロットがある
織りネームや下げ札には、それぞれの製作会社が定める最低数量があることが一般的です。Tシャツを少量で作る場合、生地や縫製の条件は満たせても、ネームの最低数量のほうが作りたい枚数を上回ることもあります。この場合、余った分は次回の生産に回すのが一般的で、最初から複数回分をまとめて作っておくと、2回目以降の副資材手配が不要になり、納期も短くしやすくなります。ただし、混率のように次回で内容が変わる可能性があるものは、まとめて作ると無駄になることがあるため、変わらないものと変わりうるものを分けて考えるのが安全です。副資材の下限がロット全体に与える影響は、最低ロット(MOQ)の記事でも触れています。
発注者がやっておくと納期が安定すること
- 副資材の一覧を最初に作る:上の表をもとに、自分のTシャツに必要な副資材を書き出し、「誰が手配するか」「いつまでに決めるか」を決めておきます。OEM会社に任せる場合も、何を任せているかを把握しておくと確認漏れが減ります
- デザインが必要なものから先に着手する:織りネーム・下げ札はデザインの確定が起点になるので、生地やサンプルの検討と並行して進めておきます
- 表示に関わる情報を早めに確定する:混率・洗濯方法・表示者名は洗濯ネームの製作に直結します。サンプルの段階で洗濯試験を済ませ、表示内容を決めておくと手戻りが減ります
- 仕様書に副資材の欄を設ける:付け位置・向き・数量を仕様書に書いておくと、工場側の判断で仕上がりが変わるのを防げます。書き方は縫製仕様書の書き方の記事を参考にしてください
- 次回も使うものはまとめて作るか検討する:ネームや袋など内容が変わらないものは、最低ロットと保管の手間を見比べて、複数回分を作るかを決めます
副資材の確認はサンプルの段階で
最初のサンプルには副資材が付いていないことも多いですが、量産前の最終確認用のサンプルには実物の副資材を付けてもらい、織りネームの色味、洗濯ネームの文字の読みやすさ、下げ札の付け位置、袋に入れたときの見え方まで確認しておくと安心です。副資材は納品後の検品でも見られる項目で、付け忘れ・付け位置の違い・表示内容の誤りは、生地や縫製の問題より発見が遅れがちです。検品で見られる内容は検品と検針の記事にまとめています。
まとめ
副資材とは生地以外の材料の総称で、Tシャツでは糸・肩テープ・織りネーム・洗濯ネーム・下げ札・包装材などがこれにあたります。単価は小さくても、手配先が分かれ、オリジナル品は製作期間がかかり、表示内容が決まらないと作れず、縫製前に届いていなければならないものがある、という理由で納期を左右しやすい存在です。生産を依頼するときは、生地と縫製だけでなく、副資材の一覧と手配の順番まで含めて計画に入れておくと、「あとはネーム待ち」という状態を避けやすくなります。