TシャツをOEMで作ろうとして最初にぶつかるのが、「ありボディ」と「フルオーダー」のどちらで進めるかという分かれ道です。ありボディは、すでに縫い上がっている無地のTシャツにプリントやタグ付けなどの加工を施す方法。フルオーダーは、生地を選び、型紙を起こし、自分の仕様で縫製するところから作る方法です。同じ「オリジナルTシャツ」でも、この二つは費用の構造も、かかる期間も、できあがりの自由度もまったく違います。ここでは、ありボディとフルオーダーの違いを工程・費用・枚数・自由度・期間の五つの面から整理し、どちらで始めるべきかを判断するための考え方をまとめます。
ありボディとフルオーダーは、どこから作るかが違う
二つの違いを一言でいえば「生地の段階から作るかどうか」です。
ありボディ(既製ボディ)
ボディメーカーが企画・生産している無地のTシャツを仕入れ、そこにプリント、刺繍、首ネームの付け替えといった加工を加えて完成させる方法です。縫製そのものはすでに終わっているため、発注者が決めるのは「どのボディを使うか」と「どんな加工をするか」の二つに絞られます。
フルオーダー(別注・オリジナル縫製)
生地の選定、型紙(パターン)の作成、サンプル縫製、量産縫製までを自分の仕様で行う方法です。身幅や着丈、首リブの幅、袖の形、縫い目の仕様まで自由に決められる代わりに、決めることが多く、工程も長くなります。
「ありボディは既製品を使う」という言い方に不安を感じる人もいますが、市場に出回っているブランドTシャツの中にも、ありボディをベースにしたものは珍しくありません。どちらが上という話ではなく、目的に合うほうを選ぶ話です。
五つの面で並べて比べる
| 比べる点 | ありボディ | フルオーダー |
|---|---|---|
| 工程 | ボディ選定→加工→納品 | 生地選定→パターン→サンプル→量産→納品 |
| 初回の枚数 | 数十枚程度から相談できることが多い | 生地の仕入れ単位に縛られ、100枚前後〜数百枚になることが多い |
| 初期費用 | 版代・ネーム代など加工の準備費が中心 | パターン代・サンプル代・生地代が先に必要 |
| 1枚あたりの費用 | ボディ代+加工費。枚数が少ないうちは割安になりやすい | 枚数が増えるほど下がりやすいが、少量では割高になりやすい |
| 自由度 | ボディの型・色・生地の範囲内 | シルエット・生地・付属まで自由 |
| 期間の目安 | 数週間程度が多い | 2〜3か月以上が多い |
数字はいずれも一般的な目安で、工場や時期、仕様によって前後します。特に枚数については、ありボディでも加工の種類によっては最低数が設定されていることがありますし、フルオーダーでも生地屋の在庫を分けてもらえれば少量で始められる場合があります。
費用の違いは「何に先にお金がかかるか」で見る
ありボディとフルオーダーの費用差は、1枚あたりの単価だけを見ても判断できません。先に出ていくお金の種類が違うからです。
- ありボディ:ボディの仕入れ代と加工費が中心です。シルクスクリーンなら版代、首ネームを付け替えるならネームの作成費が初期費用として加わりますが、金額の規模は比較的小さく収まることが多いです。
- フルオーダー:量産に入る前に、パターン代とサンプル代、そして生地代が必要になります。生地は1反(ロール)単位で仕入れることが多く、この単位が実質的な最低枚数の目安のひとつになります。
そのため、同じ「50万円の予算」でも、ありボディなら加工に予算を回せる一方、フルオーダーでは準備費に相当部分が使われる、ということが起こります。パターン代の考え方はパターン(型紙)の作成費用は何で決まるか、サンプルの費用と期間はサンプル制作の費用と期間で詳しく触れています。
自由度の違いは「どこまで自分で決めたいか」で見る
ありボディで選べるのは、ボディメーカーが用意している型・色・生地の範囲です。近年はオンス違い、シルエット違い、リブ幅違いなど選択肢が広がっていて、ロゴTシャツやグラフィックTシャツであれば十分に成立するケースが多くあります。
一方で、次のような要望がある場合はありボディでは実現しにくく、フルオーダーの検討対象になります。
- 身幅・着丈・肩幅の比率を自分のブランドの基準で決めたい(独自のオーバーサイズ設計など)
- 首リブの幅や肩テープ、裾の始末など、縫製仕様にこだわりがある
- 既製にない生地(特定の番手・編み地・染め)を使いたい
- ボディメーカーの型が変わったり廃番になったりするリスクを避けたい
最後の点は見落とされがちですが、ありボディは自社で型を持っていないため、ボディ側の仕様変更や廃番の影響を受けます。継続的に同じ型で売っていきたいブランドにとっては、フルオーダーで型を持つ意味がここにあります。
期間の違いは「着用日・発売日から逆算できるか」で見る
ありボディは、ボディの在庫があれば加工期間だけで納品できるため、数週間程度で手元に届くことが多いです。イベントや発売日が近い場合、現実的に選べるのはこちらになることがほとんどです。
フルオーダーは、生地の手配、パターン作成、サンプルの往復、量産縫製と工程が続くため、2〜3か月以上を見ておくことが一般的です。修正が入れば、そのぶん延びます。スケジュールの組み方はTシャツOEMの納期と逆算スケジュールにまとめています。
どちらで始めるべきか:判断の順番
迷ったときは、次の順番で考えると決めやすくなります。
1. 期限があるか
着用日や発売日まで2か月を切っているなら、フルオーダーは間に合わないことが多く、ありボディが現実的な選択になります。
2. 初回に何枚売れる見込みがあるか
初回が数十枚の見込みであれば、ありボディのほうが在庫リスクを抑えられます。100枚を超える見込みが立っていて、リピートも想定しているなら、フルオーダーの初期費用を回収できる可能性が出てきます。
3. ボディの範囲で表現できるか
デザインの中心がプリントやロゴなら、ありボディで成立することが多いです。シルエットや生地そのものがブランドの核であれば、フルオーダーでないと表現しきれないことがあります。
4. 継続して同じ型を売るか
単発の企画やノベルティならありボディ、定番として何年も売っていきたいなら、型を持てるフルオーダーが向いています。
「ありボディで始めて、フルオーダーに移る」という進め方
実際には、ありボディとフルオーダーは二者択一ではなく、段階として使い分けることができます。最初の1型はありボディで作って市場の反応を見る。売れ筋がはっきりしてきたら、その型の寸法やシルエットを参考にしてフルオーダーに移行する。この流れなら、初期投資を抑えながら、あとで自社の型を持つことができます。
ありボディで始める場合、首ネームや品質表示を自分のブランドのものに付け替えると「自分の服」としての形が整います。その実務はタグ付け替えでブランド化する方法で、少量で受けてもらうための伝え方はTシャツOEMは何枚から作れるかで解説しています。
逆に、ありボディで反応を見ずにいきなりフルオーダーで数百枚を作ると、型の修正が必要になったときにやり直しの負担が大きくなります。ブランドに強い設計思想があり、資金と時間に余裕がある場合を除けば、段階を踏むほうが失敗しにくい進め方です。
相談するときに伝えるとよいこと
OEM会社や工場に相談するとき、「ありボディとフルオーダーのどちらがよいか」自体を相談して構いません。その際、次の情報があると、相手も具体的に提案しやすくなります。
- 着用日・発売日(あれば)
- 初回の枚数の見込みと、継続の予定
- 予算の上限(上代と原価率、または製造費の上限)
- デザインの中心がプリントなのか、シルエットや生地なのか
- 参考にしたい市販Tシャツの現物や写真
とくに参考の現物があると、「このボディに近いものがある」「この仕様はフルオーダーでないと再現できない」といった判断を早くしてもらえます。
まとめ
- ありボディは既製の無地Tシャツに加工する方法、フルオーダーは生地から自分の仕様で縫製する方法。違いは「どこから作るか」
- ありボディは少量・短期間・低い初期費用で始められる一方、ボディの範囲内でしか決められない
- フルオーダーは自由度が高く型を持てるが、パターン・サンプル・生地の準備費と2〜3か月以上の期間が先に必要になることが多い
- 判断は「期限」「初回枚数」「ボディで表現できるか」「継続するか」の順で考える
- 迷うなら、ありボディで反応を見てからフルオーダーに移る段階的な進め方が失敗しにくい