アパレルの生産を工場に頼むとき、見積もりの中に「パターン(型紙)作成費」という項目が出てきて戸惑う方は少なくありません。アパレルのパターン(型紙)の費用は、生地代や縫製代のように枚数に応じて増えるものではなく、1型ごとにかかる初期費用です。ここではTシャツを例に、パターン作成の費用が何で決まるのか、あわせて出てくる「グレーディング」とは何で、どんなときに必要になるのかを整理します。
パターン(型紙)とは、何をする工程か
パターンは、デザイン画やイメージを、実際に裁断できる平面の形に置き換えた設計図です。Tシャツのように構造が単純に見えるアイテムでも、前身頃・後ろ身頃・袖・首リブといった各パーツの形と寸法、縫い代の幅、合印の位置などがすべてここで決まります。
この設計図をもとにサンプルが作られ、サンプルを見て修正し、確定した型紙で量産に入る、というのが基本の流れです。全体の流れはアパレルOEM、サンプルから量産までの流れと期間の目安にまとめています。
パターンの精度は、そのまま仕上がりのシルエットに出ます。「着丈は同じなのに、なぜかこの工場のTシャツはきれいに見える」という差の多くは、生地や縫製だけでなく、肩の傾きや袖ぐりの形といったパターンの設計から来ていることがあります。
パターン作成の費用は、何で決まるのか
パターン作成は「1型いくら」という形で見積もられることが多く、金額は依頼先や条件によってかなり幅があります。金額そのものより、次のような要素で上下すると考えておくと見積もりが読みやすくなります。
- 新規で起こすか、既存の型を修正するか:ゼロから起こすより、工場やOEM会社が持っている型をベースに手直しするほうが工数は少なくなる傾向があります
- アイテムの種類(基本となる料金):パターン料金は、アイテムごとに基本となる金額が設定されていることが多く、構造が複雑なアイテムほど高くなる傾向があります。同じ「1型」でも、コートやダウンのようなアイテムはTシャツより基本料金が高いケースが多く、Tシャツは比較的低めの区分に入ることが一般的です
- パーツ数:型紙を起こすパーツの数でも費用は変わります。前身頃・後ろ身頃・袖・首リブで構成される基本的なTシャツに対して、切り替えやポケット、袖の別パーツなどが加わるほど、起こす型紙の枚数が増え、工数も費用も上がることが多いです
- シルエットの難しさ:オーバーサイズやドロップショルダーのように「バランスが命」のシルエットは、パーツ数が少なくても見た目以上に調整が必要になることがあります
- サイズ展開の数:基準サイズの型を作ったあと、他のサイズに展開する作業(グレーディング)がサイズ数に応じて加わります
- 修正回数:サンプルを見て「もう少し身幅を」「袖を短く」と直すたびに、型紙にも修正が入ります。何回目までが基本料金に含まれるかは依頼先で異なります
- データの扱い:紙の型紙のみか、CADデータでも受け取れるかによって条件が変わることがあります
いずれも枚数には関係なく、1枚作る場合でも1,000枚作る場合でも発生する費用です。そのため、少ない枚数で作るほど1枚あたりに乗る負担は大きく見えます。この構造はTシャツのOEM生産、ロット数と原価はどう決まるのかで解説しています。
グレーディングとは何か、なぜ必要なのか
グレーディングは、基準となるサイズ(Mサイズなど)で作った型紙を、SやL、XLといった他のサイズに展開する作業です。「Mを一回り大きくすればLになる」と思われがちですが、実際にはそう単純ではありません。
体は全体が同じ比率で大きくなるわけではないため、身幅は広げても首まわりはそれほど広げない、袖丈は少しだけ伸ばす、といった具合に、部位ごとに違う幅で寸法を動かします。この動かす幅を「ピッチ」と呼び、ブランドの想定する体型や着方によって設計が変わります。Tシャツであれば、身幅・着丈・肩幅・袖丈・首まわりのそれぞれに、サイズ間でどれだけ差をつけるかを決めることになります。
グレーディングが必要になるのは、複数サイズを展開するときです。費用はサイズ数に応じて加わることが多いので、初回から5サイズ展開するのか、まずは2〜3サイズに絞るのかは、費用に直接ひびく判断のひとつです。サイズ展開の考え方は、在庫リスクとも関係するため、初回は絞って様子を見るという選択もよく取られます。
Tシャツでパターン費用を抑える、現実的な方法
パターンとグレーディングの費用は、工夫次第で小さくできる部分でもあります。Tシャツの場合は、次の方法がよく使われます。
既製ボディを使う(ありボディ)
すでに型として存在するTシャツ(ありボディ)を使い、プリントや刺繍でオリジナルにする方法です。この場合、型紙を新しく起こす必要がないため、パターン費用もグレーディング費用も基本的に発生しません。生地や形の自由度は下がりますが、初期費用を抑えて始めたい段階では有力な選択肢です。ありボディとフルオーダーの違いはTシャツOEMは何枚から作れる?小ロット対応の実際で整理しています。
既存の型を修正して使う
OEM会社や工場が持っているTシャツの型をもとに、「着丈を少し長く」「身幅を広く」といった修正で仕上げる方法です。ゼロから起こすより工数が少なく、費用が抑えられることが多い進め方です。ただし、ベースになる型の設計思想がブランドの狙いとずれていると、修正を重ねても納得のいく形にならないことがあります。
手元の現物を渡す
「このTシャツのシルエットに近づけたい」という現物があるなら、それを渡すのが最も早く、修正回数も減りやすい方法です。言葉や数字だけで伝えるより、パタンナーが意図を汲み取りやすくなります。
初回はサイズ数を絞る
グレーディング費用はサイズ数に比例しやすいため、初回は主力の2〜3サイズに絞り、売れ行きを見てから展開を増やす方法です。追加サイズは後から展開できます。
型紙の所有とデータの扱いは、先に確認しておく
意外と見落とされやすいのが、「作ったパターンは誰のものか」という点です。パターン作成費を支払ったからといって、必ず型紙やデータが発注者に渡されるとは限りません。依頼先によって、次のような扱いの違いがあります。
- 型紙・データを発注者に納品し、他の工場でも使える
- 型紙は依頼先が保管し、その依頼先で生産する限りリピートに使える
- データの引き渡しは別料金になる
どれが正解というわけではありませんが、将来的に生産先を変える可能性があるなら、最初に確認しておくと後で困りません。契約上の細かい取り決めは依頼先ごとに異なるため、見積もりの段階で「パターンデータは受け取れますか」と一言聞いておくのが確実です。
依頼するときに伝えること、確認すること
パターンの見積もりを取るときは、次の情報がそろっていると話が早く進みます。
- 作りたいTシャツのデザイン画、または近いシルエットの現物
- 基準サイズと、展開したいサイズ数
- 着てほしい人と場面(体にフィットさせたいのか、ゆったり着せたいのか)
- 生地の目星(生地の伸び方によって型紙の設計が変わるため)
- リピート生産の見込みがあるか
逆に、見積もりを受け取ったら確認したいのは、修正が何回まで含まれるか、グレーディングは何サイズ分が含まれているか、型紙やデータの扱いはどうなるか、の三点です。この三点が見積書に書かれていないときは、口頭で確認して記録に残しておくと安心です。
まとめ
- パターン(型紙)作成費は枚数に関係なくかかる1型ごとの初期費用。金額は新規か修正か、アイテムの種類、パーツ数、シルエットの難しさ、サイズ数、修正回数で変わる
- グレーディングは基準サイズを他サイズに展開する作業で、部位ごとに違う幅で寸法を動かす。複数サイズを展開するときに必要になり、費用はサイズ数に応じて加わることが多い
- Tシャツならありボディや既存型の修正、現物の提示、初回のサイズ数の絞り込みで費用を抑えやすい
- 型紙とデータの所有・引き渡しは、依頼先によって扱いが違うため、見積もり段階で確認しておく