アパレルのOEMでは、量産に入る前に必ず「サンプル」を作ります。ただ、アパレルのサンプルの費用と期間は工場やOEM会社によって見積もりの形がまちまちで、「サンプル代は無料と言われたのに、あとから請求が来た」「サンプルが上がるまで1か月以上かかった」という戸惑いもよく聞きます。ここではTシャツを例に、サンプル制作の費用が何で構成されているのか、期間はどこで延びるのか、そして上がってきた1stサンプルで何を見ればよいのかを整理します。
サンプルには種類があり、費用も期間も違う
ひとくちにサンプルと言っても、目的の違う何種類かがあります。見積もりを読むときは、どのサンプルの話をしているのかを先に揃えておくと混乱しません。Tシャツの場合、よく出てくるのは次の三つです。
- 1stサンプル(ファーストサンプル):型紙とデザインを初めて形にしたもの。シルエットや寸法、仕様が意図どおりかを確かめるのが目的で、生地や色は本番と違うことも珍しくありません
- 修正サンプル(2nd・3rd):1stを見て直した点を反映したもの。修正の大きさによっては省略されることもあります
- 量産前サンプル(確認サンプル・先上げ):本番の生地・副資材・プリントで作る最終確認用。これが量産の基準になります
このほか、生地の風合いだけを見るための「生地サンプル(スワッチ)」や、プリントの発色を確かめる「プリントサンプル」を別に取ることもあります。サンプルの位置づけと量産までの全体の流れはアパレルOEM、サンプルから量産までの流れと期間の目安にまとめています。
サンプル制作の費用は、何で構成されているか
サンプル代は「1点いくら」でまとめて提示されることが多いのですが、中身を分けると次のような要素でできています。どこまでが含まれているかは依頼先で異なるため、見積もりに項目が書かれていないときは確認しておくと安心です。
- パターン(型紙)作成費:新規で型を起こす場合に発生します。既製の型を使う場合や、依頼先の既存型を修正する場合は小さくなる、または発生しないことがあります
- 生地・副資材代:サンプル用に少量の生地や首リブ、ネームなどを手配する費用です。量産用の生地がまだ手元にないときは、近い風合いの手持ち生地で代用することもあります
- 縫製工賃:1点だけを縫う作業は、量産のように流れ作業にできないため、1枚あたりで見ると量産時の工賃より高くなるのが一般的です。サンプル代が量産単価の数倍に見えるのはこのためで、必ずしも割高な見積もりというわけではありません
- プリント・刺繍の版代や加工費:シルクスクリーンなら版を作る費用、刺繍ならデータ作成費がサンプル段階で発生することがあります。量産時に同じ版・データを使えるかは確認しておきたい点です
- 送料・検品などの諸費用:見積もりに含まれているか、別建てかは依頼先によります
「サンプル代無料」「量産時にサンプル代を相殺」という条件を出す依頼先もあります。この場合は、量産に進まなかったときにサンプル代が発生するのか、量産の最低数量が条件になっていないかを、先に聞いておくと後のトラブルを避けやすくなります。最低数量の考え方は最低ロット(MOQ)はなぜ決まるのかで解説しています。
サンプルの期間は、どこで延びるのか
Tシャツの1stサンプルは、依頼先に必要な情報がすべてそろっている状態から数えて、2〜4週間程度を目安に見ておく方が多いようです。ただしこれは「縫っている時間」ではなく、その前後の待ち時間を含めた期間です。実際に延びやすいのは次のような場面です。
- 生地の手配待ち:サンプル用の生地を取り寄せる場合、その到着を待ってから縫製に入ります。手持ちの生地で代用できれば短縮できることがあります
- 仕様の確認のやり取り:プリント位置やサイズ寸法など、依頼側の指示が曖昧だと、質問と回答の往復で日数が過ぎていきます。最初に伝えておくべき内容はアパレルOEMの依頼方法|最初の問い合わせで伝えるべきことを参考にしてください
- 依頼先の混み具合:工場は量産ラインの合間にサンプルを縫うことが多く、繁忙期は順番待ちになることがあります
- 修正サンプルの往復:1stの修正点が多いと2nd、3rdと続き、1回ごとに数週間が加わります
期間を短くしたいなら、「サンプル用の生地は依頼先の手持ちで構わない」「1stは色違いで構わない」と最初に伝えておくと、生地待ちの時間を省けることがあります。
1stサンプルで見るべき点
1stサンプルは「気に入ったかどうか」を見るものではなく、「量産に進む前に直すべき点を洗い出す」ためのものです。感想だけで終わらせず、次の順に確認していくと、修正の指示が具体的になります。
寸法を測る
身幅・着丈・肩幅・袖丈・首まわりを実際にメジャーで測り、指示した数値と比べます。伸縮する生地は測り方で数字が変わるため、平置きで、どこからどこまでを測ったかを依頼先と揃えておきます。
着てみる
想定している体型の人に実際に着てもらい、首の開き、肩の落ち方、袖の長さ、腕を上げたときの突っ張りなどを見ます。平置きではきれいでも、着ると印象が変わることはよくあります。
仕様を照らし合わせる
首リブの幅、裾や袖口の始末、ステッチの本数、ネームの位置など、指示したとおりになっているかを一つずつ確認します。ここで「言わなかったけれど、そうしてほしかった」点が見つかることも多く、それ自体が仕様書を完成させる材料になります。
プリントや刺繍の位置・大きさ
紙の上で決めた位置と大きさが、実際に着たときにどう見えるかを確かめます。胸のロゴが思ったより大きい、位置が高い、といった調整はこの段階で済ませておくと、量産後の後悔が減ります。
洗ってみる
可能であれば一度家庭で洗濯し、縮み・首まわりの戻り・プリントの状態を見ます。サンプルが1点しかないと迷いますが、量産後に「洗ったら縮んだ」と分かるより、サンプルの段階で分かるほうがはるかに安く済みます。生地の厚みや性質による違いはTシャツの生地は何オンスがいい?も参考になります。
修正の指示は「数字」と「写真」で伝える
1stサンプルを見て修正を頼むときは、「もう少しゆったり」ではなく、「身幅を2cm広げる」「着丈を1cm短くする」のように数字で伝えると、次のサンプルで意図どおりに上がりやすくなります。位置の指示は、サンプルにマスキングテープを貼って写真を撮り、そこに数字を書き込むと伝わりやすい方法です。
修正点が多いときは、優先順位を付けて「ここは必ず直す」「ここはできれば」を分けておくと、依頼先も判断しやすくなります。修正のたびにサンプルを作り直すのか、軽微な修正は量産前サンプルでまとめて確認するのかも、費用と期間に関わるので相談しておくとよいでしょう。
まとめ
- サンプルには1st・修正・量産前などの種類があり、目的も費用も違う。見積もりはどのサンプルの話かを先に揃える
- サンプル代は型紙・生地・工賃・版代などの合計。1点ものの工賃は量産単価より高くなるのが一般的で、それ自体は不自然ではない
- 期間は縫う時間より、生地待ちや仕様確認の往復で延びることが多い。手持ち生地での代用や、指示を先にそろえることで短縮できる場合がある
- 1stサンプルは寸法・着用感・仕様・プリント位置・洗濯後の順に確認し、修正は数字と写真で伝える