ゆったりと着るオーバーサイズのTシャツは、ブランドの定番として作りたいという相談の多いアイテムです。ただ、オーバーサイズTシャツの作り方は「普通のTシャツをひと回り大きくするだけ」ではありません。身幅だけを広げると、肩が落ちすぎたり、丈が長すぎたりして、意図した雰囲気にならないことがよくあります。この記事では、オーバーサイズTシャツをOEMで作るときに、どの寸法をどう考えて仕様を決めるかを、発注前に整理しておきたい順番でまとめます。
オーバーサイズは「全部を大きくする」ことではない
オーバーサイズのTシャツは、各部の寸法のバランスで見え方が決まります。同じ「大きめ」でも、身幅が広く丈は短めなら今っぽいボックス型に、身幅も丈も長ければゆったりしたロング丈の印象になります。
そのため、仕様を決めるときは「何サイズ大きくするか」ではなく、どの部分をどれだけ広げ、どこはあえて抑えるかを考えるのが基本です。最初に「どんなシルエットにしたいか」を、手持ちの服や参考画像で具体的に決めておくと、工場とのやり取りがスムーズになります。
仕様を決めるときに見る5つの寸法
1. 身幅:印象をいちばん左右する
オーバーサイズらしさを最も分かりやすく出すのが身幅です。ただし広げすぎると、着たときに生地が横に余ってだらしなく見えることもあります。身幅は、次に挙げる肩幅・着丈との組み合わせで決めるのがおすすめです。
2. 肩幅と肩の位置:ドロップショルダーにするか
オーバーサイズのTシャツでは、肩の縫い目を本来の肩より腕側に落とすドロップショルダーがよく使われます。肩の線が落ちることで、身幅を広げても肩まわりが自然に見えやすくなります。
一方で、肩の落とし方が大きすぎると、袖の付け根が二の腕の途中にきて、腕を動かしにくく感じることがあります。どこまで落とすかは、サンプルで実際に着て確認するのが確実です。
3. 着丈:身幅とのバランスで決める
身幅を広げたときに着丈も同じ比率で伸ばすと、全体が大きく見えすぎることがあります。ボックス型にしたい場合は、身幅に対して着丈をやや短めに抑えるのがひとつの考え方です。タックインするか、裾を出して着る前提かによっても適した丈は変わります。
4. 袖丈と袖幅:五分袖寄りにするか
ドロップショルダーにすると、同じ袖丈でも袖口の位置が下がり、肘に近い長さになることがあります。袖幅も広めにとると、腕まわりにゆとりのある今っぽい雰囲気が出やすくなります。袖口が広すぎると間延びして見えることもあるため、身幅と合わせて調整します。
5. 首まわり:大きさと襟リブの幅
身幅を広げても、首まわりの開きまで同じ比率で大きくすると、首元が開きすぎて見えることがあります。首まわりは身幅ほど広げず、襟リブをやや太めにして全体のボリュームと釣り合わせる、という調整がよく行われます。
| 部位 | 通常のTシャツ | オーバーサイズで多い考え方 |
|---|---|---|
| 身幅 | 体に沿う〜適度なゆとり | 大きく広げる(シルエットの主役) |
| 肩 | 肩の位置に縫い目 | 腕側に落とす(ドロップショルダー) |
| 着丈 | 身幅に比例 | 身幅ほど伸ばさず、やや短めに抑えることも |
| 袖 | 半袖の標準的な長さ | 袖口が肘寄りになる・袖幅も広め |
| 首まわり | 標準 | 開きすぎないよう抑え、リブを太めに |
※上の表は一般的な傾向の一例で、狙うシルエットによって正解は変わります。
生地の厚みも「形」の一部になる
オーバーサイズのTシャツは、生地の厚みでシルエットの出方が大きく変わります。薄手の生地は体に沿って落ちるため、広げた身幅がドレープ(たるみ)として出やすくなります。厚手の生地はハリがあるため、ボックス型の形を保ちやすくなります。
どちらが良いということではなく、狙う雰囲気に合わせて選ぶことが大切です。厚みの目安はTシャツの生地のオンスの選び方、生地の種類による違いは天竺・度詰め・スラブ・杢の違いで解説しています。
ありボディで作るか、フルオーダーで作るか
オーバーサイズのTシャツは、既製の無地Tシャツ(ありボディ)にもビッグシルエットの型が用意されていることがあります。型紙を作る必要がないため、少ない枚数から始めやすく、納期も読みやすいのが利点です。
一方で、肩の落とし方や着丈のバランスまで自分のイメージに合わせたい場合は、型紙から作るフルオーダーが向いています。細かい寸法を調整できる分、パターン作成やサンプルの費用と期間がかかります。どちらで始めるかの判断はありボディとフルオーダーの違いを参考にしてください。
サイズ展開はオーバーサイズだと絞りやすい
ゆったりしたシルエットは1つのサイズで着られる体格の幅が広いため、通常のTシャツよりサイズ展開を少なくしやすい傾向があります。男女兼用でもサイズを絞れることがあり、在庫を抱えにくい点はオーバーサイズの利点のひとつです。ただし、小柄な方には大きすぎることもあるため、ターゲットに合わせた判断が必要です。展開数と配分の考え方はTシャツのサイズ展開の決め方でまとめています。
サイズを増やす場合は、グレーディング(型紙の他サイズ展開)でも「どの寸法を何cmずつ変えるか」を決める必要があります。オーバーサイズでは、身幅は大きく変えても着丈はあまり変えない、といった調整をすることもあります。詳しくはパターン(型紙)の作成費用とグレーディングをご覧ください。
工場に伝えるときのコツ
- 参考になる実物を用意する:イメージに近いTシャツが手元にあれば、それを基準に「身幅はこのまま、着丈はもう少し短く」のように伝えると誤解が起きにくくなります
- 寸法表で伝える:「大きめ」「ゆったり」といった言葉は、人によって受け取り方が違います。身幅・着丈・肩幅・袖丈・袖幅・首まわりを数字で示すのが確実です。書き方は縫製仕様書の書き方で紹介しています
- 着用写真で確認する:オーバーサイズは平置きの寸法だけでは見え方が判断しにくいアイテムです。サンプルが上がったら、想定する体格の人に着てもらって確認しましょう。サンプルで見るべき点はサンプル制作の費用と期間で解説しています
まとめ
オーバーサイズTシャツは、身幅だけを大きくするのではなく、身幅・肩・着丈・袖・首まわりのバランスで作るアイテムです。狙うシルエットを具体的に決め、生地の厚みも含めて仕様を考えると、イメージに近い一枚に仕上がりやすくなります。まずはありボディで反応を見て、手応えがあればフルオーダーで自分たちの形を作る、という進め方もあります。どこから決めればよいか迷ったら、手持ちの参考品をもとに相談してみてください。