オリジナルTシャツをOEMで作ろうとすると、生地の話で必ず出てくるのが「オンス」という単位です。5.6オンス、6.2オンスと数字を並べられても、着たときに何がどう変わるのかは分かりにくいところだと思います。Tシャツの生地のオンス(厚み)の選び方は、数字そのものを比べるより「誰が、どんな場面で着るのか」から逆算するほうが決めやすくなります。ここではオンスが何を表しているのか、薄手・標準・厚手がそれぞれ向く場面、そして工場に伝えるときの言い方を整理します。
オンスは「厚み」ではなく「重さ」を表している
オンス(oz)は、1平方ヤードあたりの生地の重さをポンド系の単位で表したものです。厚みを直接測った数字ではありませんが、同じ種類の編み生地どうしを比べるかぎり、重い生地は厚くしっかりしている傾向があります。そのため実務では「オンスが大きい=厚手」という理解でおおむね通用します。
1オンスはおよそ34g/m2にあたるため、5.6オンスなら190g/m2前後という換算になります。海外の工場や生地商社とのやり取りではg/m2(グラム目付。GSMと表記されることもあります)で話が進むことも多いので、両方の言い方を知っておくと確認が早く済みます。
あわせて覚えておきたいのが、目付には製造上の許容差があるという点です。表記どおりの数字にぴったり仕上がるとは限らず、ロットによって多少の幅が出ることがあります。どの程度の差なら許容できるかを先に共有しておくと、量産で揉めにくくなります。
薄手・標準・厚手のおおまかな目安
会社によって呼び分けの境目は少しずつ違いますが、話をするときの共通言語として、次のくらいの整理を持っておくと通じやすくなります。
| 区分 | 目安 | 手に取った印象 | 向きやすい場面 |
|---|---|---|---|
| 薄手 | 4オンス前後 | 軽く、やわらかい。生地の色によっては透けを感じることがある | 枚数を多く配る、暑い時期に着てもらう |
| 標準 | 5〜5.6オンス | 張りと軽さのバランスが取りやすい、いわゆる定番の厚み | 通年で売る、幅広い層に着てもらう |
| 厚手 | 6オンス以上 | ずっしりして、洗ってもへたりにくい印象になりやすい | 単価を上げたい、長く着てもらう前提の企画 |
5.0と5.6のように0.6オンスの差でも、手に取ると意外とはっきり分かることがあります。逆に、同じ5.6オンスでも編み方や糸の違いで印象は変わるため、数字だけで判断しきらないほうが安全です。
用途から選ぶと、ぶれにくい
枚数を多く配る、イベントで使う
来場者に配る、当日スタッフに着てもらうといった用途では、薄手から標準のあたりが選ばれることが多くなります。軽くて扱いやすく、まとまった枚数でも予算が組みやすいためです。ただし薄手は生地の色とプリントの組み合わせによって裏側が透けて見えることがあるため、白や淡い色を使う場合はサンプルで確認しておくと安心です。店舗・イベントのスタッフTシャツの進め方やノベルティ用Tシャツのコストの抑え方もあわせて参考にしてください。
ブランドの定番として販売する
店頭やオンラインで売る前提なら、5〜5.6オンス前後の標準的な厚みから検討を始めるのが無難です。季節をまたいで着てもらいやすく、着る人を選びにくいためです。1型目でいきなり尖った厚みに振ると、想定していた客層と合わなかったときに在庫が動きにくくなることもあります。まず標準で出して、反応を見てから2型目で厚みを振る、という進め方もよく取られます。
単価を上げたい、長く着てもらいたい
6オンス以上のいわゆるヘビーウェイトは、生地の存在感そのものが売りになります。洗濯を重ねても形が保たれやすいという評価につながることも多く、価格に説得力を持たせやすい選択肢です。一方で夏場に着てもらう企画では暑く感じられることもあり、季節をどう想定するかで評価が分かれます。上代・下代・原価率の決め方と合わせて、上げた原価を売価に乗せきれるかを先に確認しておくとよいでしょう。
オンスだけでは着心地は決まらない
同じオンスでも、次の三つが違えば着たときの印象は変わります。見積もりの段階で数字だけを比べていると、届いてから「思っていたのと違う」となりやすい部分です。
- 編み方:表面の凹凸や伸び方が変わります。同じ重さでも、ふっくら見えるものとフラットに見えるものがあります。
- 糸の太さ(番手)と撚り:太い糸で編んだものはざっくりした表情に、細い糸を高い密度で編んだものは同じ重さでも上品な印象になりやすい傾向があります。
- 後加工:シルケット加工やバイオ加工などの有無で、光沢や毛羽の出方が変わります。
そのため、候補が2つに絞れた段階では、必ず同じ条件で編まれた生地見本を並べて触ることをおすすめします。数字の比較よりも判断が早く、社内で意見をまとめるときにも説明しやすくなります。
厚くすると、コストと納期に影響することがある
厚手の生地は使う糸の量が増えるため、同じデザインでも生地代が上がることが一般的です。加えて、重くなることで輸送費が変わる場合や、縫製・乾燥の工程に時間がかかる場合もあります。差がどの程度になるかは生地の種類や生産地によって幅があるので、「厚手にしたい」と考えた時点で、標準の厚みとの見積もりを両方取って比べておくと判断しやすくなります。
また、厚手の生地は在庫として持たれていないことがあり、その場合は生地の手配から始めることになって納期が延びることがあります。発売日が決まっている企画では、生地が決まってから逆算するのではなく、作れる枚数や納期の条件を先に伝えて、その中で選べる生地を出してもらうほうが早いことも多いです。
プリントとの相性も見ておく
プリントの仕上がりは生地の厚みにも左右されます。薄手の生地はインクの影響を受けやすく、プリント部分が硬く感じられたり、しわが寄って見えたりすることがあります。厚手なら必ずきれいに乗るわけでもなく、表面の凹凸が大きい生地では細い線が途切れて見えることもあります。
デザインが決まっているなら、生地の候補とあわせてプリント方式も同時に相談するのが確実です。方式ごとの違いはシルクスクリーンプリントと転写プリントの違いと選び方で整理しています。
サンプルで確かめておきたい四つの点
- 洗濯したあとの変化:一度洗って、風合いと寸法がどう動くかを見ます。企画の性格によっては、ここが最終判断になります。
- 透け具合:明るい場所で、実際に着た状態に近い形で確認します。薄手を検討している場合はとくに重要です。
- プリントを乗せた状態:生地単体ではなく、実際の絵柄を乗せた状態で見ると印象が変わることがあります。
- サイズ違いでの見え方:同じ厚みでも、大きいサイズでは重さが目立ちやすくなります。
あわせて、生地が決まると洗濯表示の記載内容も決まってきます。洗濯表示(品質表示)の作り方の準備も、生地確定のタイミングで動き出しておくと後半が楽になります。
工場に伝えるときは、数字より場面から
相談の入口で「5.6オンスでお願いします」と数字だけを指定すると、その数字の中でしか提案が返ってきません。実際には、次のように伝えたほうが選択肢が出てきやすくなります。
- 誰に、どの季節に着てもらう想定か
- 売価または製造費の上限をいくらに置いているか
- 想定している枚数と、リピートの予定があるか
- プリントのデザイン(色数・面積)が決まっているか
この四つが分かれば、厚みの候補は自然と絞られます。原価の考え方についてはTシャツのOEM生産、ロット数と原価はどう決まるのかで詳しく整理しているので、予算から逆算したい場合はこちらもご覧ください。オンスは選択肢を狭めるための数字ではなく、狙いを共有するための共通言語として使うのが、いちばん実務的な向き合い方だと考えています。