「オリジナルTシャツを作りたい」と考えたとき、最初にぶつかるのがロット数と価格の壁です。問い合わせてみたら「最低1,000枚から」と言われて諦めた、という声は少なくありません。
ただ、この数字は工場が意地悪をしているわけではなく、明確な理由があって決まっています。構造がわかると交渉の余地も見えてくるので、順に整理します。
最低ロットが生まれる3つの理由
1. 生地の仕入れ単位
生地は反物(たんもの)という単位で仕入れます。1反からしか買えない生地も多く、その1反で作れる枚数が実質的な下限になります。生地の種類によって1反の長さは違いますが、Tシャツなら数十枚〜百数十枚分になることが一般的です。
逆に言えば、在庫として持っている既製の生地(いわゆる「ありボディ」)を使えば、この制約は大きく緩みます。小ロットで始めたい場合、まずここを相談してみる価値があります。
2. 縫製ラインの段取り替え
縫製工場では、1つの製品を作るためにミシンの設定や作業手順を組み替えます。この段取り替えには、枚数に関係なく一定の手間がかかります。10枚でも1,000枚でも準備の労力はほぼ同じなので、枚数が少ないほど1枚あたりの負担が重くなります。
3. 副資材の最低発注数
織りネーム、下げ札、洗濯表示などの副資材にも、それぞれ最低発注数があります。ネーム類は数百枚単位からというケースが多く、これが実質的な下限を押し上げることがあります。
1枚あたりの原価に含まれるもの
見積書に出てくる金額は、ざっくり次の要素で構成されています。
| 項目 | 内容 | ロット数の影響 |
|---|---|---|
| 生地代 | 本体に使う生地 | 枚数に比例(大量なら単価が下がる) |
| 縫製工賃 | 裁断・縫製の作業費 | 枚数が増えるほど1枚あたりは下がる |
| 副資材費 | ネーム・下げ札・糸など | 最低数があるため小ロットで割高に |
| プリント・加工費 | シルクスクリーン、刺繍など | 版代は枚数に関係なく固定 |
| 検品・梱包・輸送費 | 品質チェックと配送 | ある程度は枚数に比例 |
ここで見落とされがちなのが、本生産とは別に発生する初期費用です。パターン(型紙)の作成、仕様書の作成、サンプル制作にはそれぞれ費用がかかり、これは1枚しか作らなくても発生します。初回の見積もりが想定より高く感じるのは、多くの場合この初期費用が乗っているためです。
逆に、2回目以降のリピート生産では同じ型紙を使えるため、この部分が不要になり単価は下がります。1回で終わらせず継続して作る前提で考えると、実際の負担感はかなり変わってきます。
プリント方法によるコストの違い
Tシャツで最も一般的なのはシルクスクリーンプリントです。色ごとに版を作るため、色数が増えると版代が上がります。一方で1枚あたりの印刷コストは安く、枚数が多いほど有利になります。
枚数が少ない場合や、写真のようなフルカラーの絵柄を入れたい場合は、インクジェット系のプリント(DTG)が選択肢になります。版代がかからない代わりに1枚あたりの単価は高めです。
どちらが安いかは枚数と色数の組み合わせ次第なので、デザインが固まった段階で両方の見積もりを出してもらうのが確実です。
小さく始めたいときの考え方
「まず売れるかどうか試したい」という段階であれば、次のような進め方があります。
- ありボディを使う — 既存のボディにプリントやネーム付け替えを行う。生地の反物制約を受けないため、最も小ロットに対応しやすい
- 色数・サイズ展開を絞る — 1色×3サイズなど。色やサイズが増えるほど必要な総枚数は膨らむ
- プリント色数を減らす — 版代を抑えられる。1色でも成立するデザインを検討する
- 初回はサンプルまでで判断する — サンプルを見てから量産の可否を決める。多くのOEM業者はこの進め方に対応している
見積もりを依頼するときに伝えるとよいこと
正確な見積もりを早く受け取るには、次の情報があるとスムーズです。すべて決まっている必要はなく、「未定」と伝えるだけでも構いません。
- 作りたいアイテムと、イメージに近い既製品(参考商品のURLでも可)
- 希望枚数と、サイズ・カラーの展開数
- プリントや刺繍の有無、色数
- 希望納期
- おおよその予算感
特に予算感を先に伝えておくと、その範囲で実現できる仕様を逆算して提案してもらえるため、やり取りの回数を減らせます。