展示会の来場者や店頭のキャンペーンで配るために、ノベルティのTシャツを製作したい。そう考えたときにまず気になるのが、1枚あたりいくらかかるのか、どこまで削ってよいのかという線引きだと思います。ノベルティ用のTシャツは「配ること」が目的なので、販売用のオリジナルTシャツとは判断の基準が変わります。ここでは、ノベルティTシャツの製作費が何によって決まるのかを分解したうえで、コストを抑えるために先に決めておきたい仕様を整理します。
ノベルティのTシャツは「割り切れる部分」がはっきりしている
ノベルティは無償で配られることが多く、受け取る側がサイズや色を細かく選べない場面もあります。裏を返せば、販売用のTシャツでは悩みどころになる項目を、最初から割り切って決めてしまえるということでもあります。
- 色展開 — ボディの色を1色に統一しても、ノベルティなら成立しやすい
- サイズ展開 — 2〜3サイズに絞る判断がしやすい
- デザインの点数 — 1型1デザインで完結させやすい
この3つを絞れるかどうかで、見積もりの金額は大きく動きます。一方、同じオリジナルTシャツでも、店舗スタッフが毎日着て洗うものは同じ割り切り方ができません。着る人が決まっているTシャツの進め方は店舗・イベントのスタッフTシャツを作るときの進め方で別に整理しています。
製作費を決めている4つの要素
ノベルティTシャツの見積もりは、おおまかに次の4つの積み上げでできています。どれが金額を押し上げているのかが分かると、削る場所を選べるようになります。
| 要素 | 中身 | コストへの効き方 |
|---|---|---|
| ボディ(無地Tシャツ) | 生地の厚み(オンス)、綿100%か混紡か、ボディのブランド | 枚数に比例して効く。厚手や高級ボディにすると全枚数分が上がる |
| プリント方式と色数 | シルクスクリーン、転写、インクジェットなど | 版代のような初期費用と、1枚あたりの加工費の組み合わせで変わる |
| 枚数 | 初期費用を割る母数 | 少ないほど1枚あたりが上がりやすい |
| 副資材・仕上げ | 個包装、たたみ、下げ札、袋詰め、指定の梱包 | 1枚あたりに積み上がる。見落とされやすい |
相談の段階で「Tシャツ1枚いくらですか」と聞くと答えが返ってきにくいのは、この4つが決まらないと数字が出せないためです。逆にこの4つを仮でも埋めて渡すと、返ってくる見積もりの精度が上がります。
初期費用は枚数で割られる、という見方をする
シルクスクリーンでは、デザインの色ごとに版を作る工程が入ります。この版代は枚数に関係なく最初にかかる費用なので、100枚で割るのと500枚で割るのとでは、1枚あたりに乗る金額が変わります。転写やインクジェットのように版を作らない方式は初期費用が抑えられる代わりに、1枚あたりの加工費が高めになりやすい傾向があります。
つまり、少ない枚数なら版のない方式、まとまった枚数ならシルクスクリーン、という具合に、枚数の見込みによって有利な方式が入れ替わります。どのあたりで逆転するかは加工会社の料金体系によって違うので、迷ったら「この枚数だとどちらが安くなりますか」と両方の条件で見積もりを取るのが早道です。方式ごとの仕上がりの違いはシルクスクリーンプリントと転写プリントの違いと選び方にまとめています。
コストを抑えるために先に決めておきたい5つ
- 色数を絞る — 版代とインクの手間は色数に連動します。2色を1色に落とせるかを最初に検討する
- プリントは1箇所にする — 前後にプリントを入れると、多くの場合は工程が2回に分かれます
- ボディは定番の品番・カラーを選ぶ — 在庫がある定番色のほうが、単価も納期も読みやすくなります
- サイズ展開を広げすぎない — サイズが増えるほど発注の内訳が細かくなり、余りも出やすくなります
- 納期に余裕を持つ — 特急対応は割増になることが多く、ボディの在庫確保も難しくなります
1色で成立するデザインにできないか考える
ノベルティは細部までじっくり見られるものではなく、ロゴやブランド名が一目で読めることのほうが役に立つ場面が多くなります。写真をそのまま入れるようなフルカラーのデザインは、方式が限られるうえに単価も上がりやすくなります。ロゴを1色のシルエットに整理する、ボディの色をインクの代わりに使う(濃色ボディに白1色など)といった作り方にすると、見た目の印象を保ったままコストを下げられることがあります。
サイズは絞るが、配る相手は思い浮かべておく
MとLの2サイズだけにする、といった絞り方はノベルティでは現実的な判断です。ただし、配る相手が学生中心なのか、企業の担当者中心なのかによって、必要なサイズの重心は変わります。余ったサイズは在庫として残り続けるので、合計枚数を決める前にサイズごとの配分を決めておくと無駄が出にくくなります。何枚から受けてもらえるかの考え方はTシャツOEMは何枚から作れる?小ロット対応の実際で説明しています。
安さのために削らないほうがよい部分
一方で、金額のためにいじると後で困る項目もあります。
- 表示まわり — 繊維製品の表示は配布や販売の形態によって考え方が変わる部分があるため、無償配布だから不要と決めつけずに、生産前に確認しておくほうが安全です。詳しくはTシャツの洗濯表示(品質表示)の作り方と法律上の注意点にまとめています
- 白・淡色ボディの厚み — 薄手の白は下着が透けることがあり、受け取っても着てもらえない原因になります
- 洗濯後の状態 — 1回洗って首まわりが伸びる、プリントが割れるといった状態になると、配った側の印象に返ってきます
ノベルティは受け取った人が着てくれてはじめて効果が出るものなので、「配布時点で成立していればよい」と考えると、目的から外れてしまうことがあります。
見積もりを依頼するときに伝えること
製作を依頼する会社を探す段階では、次の項目をまとめて渡すと、返信の往復が減ります。
- 用途(展示会での配布、店頭キャンペーンなど)と、配る相手のおおよその層
- 枚数の見込みと、サイズ別の配分(仮でよい)
- デザインの状態(入稿できるデータがあるか、ラフか)と、使いたい色数
- ボディの希望(厚み・色・綿100%かどうか)。決まっていなければ「おまかせ」と書く
- いつまでに手元に必要か
- 予算の目安(1枚あたりか総額のどちらか)
決まっていない項目は、無理に埋めずに「未定」と伝えたほうが話が早く進みます。埋まっていない部分については、加工会社の側から現実的な選択肢を提案してもらえることが多いためです。依頼先の種類と探し方はオリジナルTシャツを製作できる工場の探し方と依頼のステップで整理しています。
まとめ
ノベルティ用のTシャツ製作でコストを左右しているのは、ボディ・プリント方式と色数・枚数・仕上げの4つです。このうち色数とプリント箇所は、デザインの段階で決めてしまえば後から効いてくる部分なので、見積もりを取る前に検討しておく価値があります。逆に、表示まわりや生地の透け、洗濯後の状態は、削ると配った後の印象に直結します。どこを割り切り、どこを残すかを先に決めてから相談に入ると、限られた予算のなかでも狙いどおりのノベルティに近づけやすくなります。