Tシャツにオリジナルデザインを入れる方法として代表的なのが「シルクスクリーンプリント」と「転写プリント」です。同じように見えて、仕上がりの質感や耐久性、向いているデザイン、対応できる枚数がまったく異なります。どちらを選ぶかでプリントの見え方も、あとから見積もりを取り直す手間も変わってくるため、依頼前に違いを押さえておくと話がスムーズです。
シルクスクリーンプリントとは
版(スクリーン)にインクを乗せ、生地に直接刷り込む方法です。色ごとに1枚ずつ版を作るため、色数が増えるほど版代と手間が増えます。一方で、一度版を作ってしまえば1枚あたりの印刷コストは安くなり、まとまった枚数を刷るほど有利になります。
インクが生地の繊維に染み込むように定着するため、プリント部分の風合いが生地に近く、洗濯を重ねても割れたり剥がれたりしにくいのが特徴です。Tシャツのロゴプリント、ワンポイントデザインなど、色数を絞ったデザインとの相性が良い手法です。
シルクスクリーンが向いているケース
- 色数が1〜4色程度で、ベタ塗りのロゴやイラスト
- 同じデザインをある程度まとまった枚数(数十枚〜)刷る予定がある
- 洗濯耐久性やプリントの風合いを重視したい
転写プリントとは
あらかじめ専用の用紙やフィルムにデザインを印刷し、それを熱や圧力でTシャツに転写する方法です。大きく分けて、家庭用アイロンプリントに近い「熱転写」と、インクジェットで印刷したシートを転写する方式があります。版を作らないため、1枚からでもフルカラーのデザインを再現できるのが最大の特徴です。
写真やグラデーションを含む複雑なデザイン、名入れのように1枚ごとに内容が変わるアイテムとの相性が良い一方、プリント部分がシート状に生地の上に乗る仕上がりになるため、枚数を重ねるとシルクスクリーンよりも1枚あたりの単価が高くなりやすく、プリント部分の風合いも生地とは異なる質感になります。
転写プリントが向いているケース
- 写真調やグラデーションを含む、色数の多いデザイン
- 1枚ごとにデザインや名前が変わる(名入れ・個別対応)
- まずは少ない枚数でサンプルやテスト販売をしたい
比較して選ぶポイント
| 項目 | シルクスクリーン | 転写プリント |
|---|---|---|
| 初期費用(版代) | 色数分かかる | 基本的に不要 |
| 最小ロット | まとまった枚数向き | 1枚から対応しやすい |
| 得意なデザイン | 色数の少ないベタ塗り | 写真・グラデーション |
| 風合い・耐久性 | 生地になじみやすく丈夫 | シート感が出やすい |
| 枚数が増えたときの単価 | 下がりやすい | 下がりにくい |
生地の色との相性も確認しておく
もう一つ見落とされがちなのが、生地の色との相性です。ネイビーやブラックなど濃い色の生地に明るい色のデザインを乗せる場合、どちらの方式でも下地に白インクを一度敷いてから色を重ねる「下地(アンダーベース)」という工程が必要になることがあります。この工程が増えると版数や工程が増え、費用に影響することがあるため、生地の色が決まっている場合は早めに伝えておくと見積もりのズレを防げます。
また、ポリエステル比率の高い生地やストレッチ素材は、プリント方式によってはインクがひび割れやすかったり、色移り(発色不良)が起きやすかったりする組み合わせもあります。使用予定の生地(素材・混率)を伝えたうえで、その生地での実績があるかを工場に確認しておくと安心です。
迷ったときの考え方
デザインの色数が少なく、ある程度の枚数を継続して作る予定があるなら、初期費用はかかってもシルクスクリーンの方がトータルで安くなることが多いです。逆に、まず少数でテスト販売したい場合や、写真素材を使ったデザインを再現したい場合は、転写プリントから始めて、売れ行きを見てから量産をシルクスクリーンに切り替えるという進め方もよく使われます。
どちらの方式にするか迷う場合は、「想定する色数」「予定している枚数」「今後リピートする予定があるか」の3点を工場に伝えると、適した方式を提案してもらいやすくなります。同じデザインでも、両方の方式で見積もりを取り比較してから決めるのも確実な方法です。
デザインデータを準備するときの注意点
依頼するデータの形式は方式によって扱いが異なります。シルクスクリーンは色ごとに版を分けるため、色数がはっきり分かるデータ(色の境界が明確なベクター形式が望ましい)で入稿するとスムーズです。写真から絵柄を起こす場合は、色分解や版下作成の作業が別途発生することもあります。
転写プリントは写真やグラデーションをそのまま再現できるため、フルカラーのデータをそのまま使えることが多いですが、解像度が低い画像は仕上がりで粗さが目立ちやすい点に注意が必要です。ロゴなど繰り返し使うデザインは、可能であればベクターデータで保管しておくと、今後どちらの方式にも対応しやすくなります。
プリント以外の加工方法も選択肢に
デザインによっては、プリントではなく刺繍やワッペンといった加工が向いている場合もあります。立体感を出したい、洗濯耐久性を最優先したいといった要望がある場合は、プリント以外の選択肢についても工場に相談してみると良いでしょう。