自社サイトやSNSで直接お客様に販売する、いわゆるD2Cでアパレルブランドを立ち上げる人が増えています。卸を通さない分、利益を残しやすく、お客様の反応もすぐ分かるのが魅力です。ただ、D2Cのアパレル立ち上げでは、生産の組み立て方を最初に決めておかないと、在庫を抱えすぎたり、逆に売れているのに商品が届けられなかったりします。この記事では、Tシャツを例に、D2Cブランドの生産設計の考え方を、受注生産と見込み生産の使い分けを中心に整理します。
D2Cの生産は「いつ・何枚作るか」の設計がすべて
卸売りが中心のブランドでは、展示会で受けた注文の数をもとに生産量を決めるのが一般的です。一方、D2Cでは小売店のバイヤーがいないため、何枚作るかを自分で決めなければなりません。
生産量の決め方は、大きく次の2つに分かれます。
- 見込み生産:売れる枚数を予測して先に作り、在庫から出荷する
- 受注生産:先に注文(予約)を受けてから、その枚数を作って出荷する
どちらが正しいということはなく、ブランドの段階や商品の性格によって向き不向きがあります。多くのブランドは、この2つを組み合わせて運営しています。
見込み生産と受注生産の違い
| 項目 | 見込み生産 | 受注生産 |
|---|---|---|
| お届けまでの期間 | 在庫があれば数日程度で発送できる | 受注締め切り後に生産するため、数週間〜数か月かかることが多い |
| 在庫リスク | 売れ残りが出る可能性がある | 注文分だけ作るため、売れ残りは出にくい |
| 資金の動き | 販売前に生産代金を支払う必要がある | 代金を先に受け取ってから支払いに充てやすい |
| 1枚あたりの単価 | まとめて作れるため下げやすい | 注文数が少ないと割高になりやすい |
| 向いている商品 | 定番色・定番型など、継続して売れるもの | 新作・限定品・色数やサイズが多いもの |
見込み生産は「すぐ届く」という買いやすさがある反面、外れたときの在庫が重くのしかかります。受注生産は在庫リスクを抑えられますが、待ち時間がある分、お客様に納得してもらう工夫が必要です。在庫リスクそのものの考え方はアパレルの在庫リスクを抑える生産計画で詳しく書いています。
立ち上げ期は「受注生産で需要を測る」から始めやすい
ブランドを始めたばかりの時期は、どの色・どのサイズが何枚売れるか、まだ分かりません。この段階で見込み生産に踏み切ると、予測が外れたときの影響が大きくなります。
そのため、立ち上げ期は予約販売(受注生産)で最初のTシャツを出し、実際の注文数を見てから次の生産量を決めるという進め方がよく選ばれます。予約期間を設けてページで受注し、締め切り後に工場へ発注する形です。支援を先に集める形式のクラウドファンディングも、考え方は同じです。進め方はクラウドファンディングでアパレルを生産するときのスケジュールで整理しています。
ただし、受注生産には注意点もあります。
- 注文が少ないと、工場の最低ロットに届かないことがある
- 締め切りから発送までの期間を、ページではっきり約束する必要がある
- 生地や副資材の手配に時間がかかると、お届けが遅れやすい
最低ロットに届かなかった場合にどうするか(予備を含めて最低ロットで作る、販売を延期するなど)を、先に決めておくと慌てずにすみます。ロットの考え方は最低ロット(MOQ)はなぜ決まるのかを参考にしてください。
売れ筋が見えてきたら、定番だけ見込み生産に切り替える
何度か販売を重ねると、「白と黒のTシャツは毎回売れる」「Mサイズの比率が高い」といった傾向が見えてきます。こうした継続して売れることが分かった商品だけを見込み生産に回し、在庫を持って即納できるようにするのが、使い分けの基本形です。
一方で、新しい色やデザイン、限定のコラボ品などは引き続き受注生産で出し、反応を見てから定番に加えるか判断します。つまり、
- 定番:見込み生産で在庫を持ち、すぐ届ける
- 新作・限定:受注生産で需要を確かめてから作る
という二段構えにしておくと、在庫を必要以上に増やさずに、買いやすさも確保しやすくなります。サイズごとの配分はTシャツのサイズ展開の決め方で詳しく扱っています。
見込み生産に切り替えるときに確認したいこと
1. 追加生産のリードタイム
見込み生産で在庫を持つ場合、在庫が減ってから追加で作るまでに何週間かかるかを把握しておく必要があります。追加の発注から入荷までの期間を工場に確認し、その期間に売れる枚数を目安に、発注のタイミングを決めておくと欠品を防ぎやすくなります。納期の考え方はTシャツOEMの納期と逆算スケジュールも参考になります。
2. 同じ仕様で作り直せるか
定番として売り続けるには、2回目以降も同じ生地・同じ色・同じ寸法で作れることが前提です。生地が廃番になったり、染めの色がロットごとにぶれたりすることもあるため、生地の継続性や色の許容範囲を事前に確認しておくと安心です。仕様は縫製仕様書として残しておくと、追加生産のたびに同じ指示を出せます。
3. 在庫の保管と出荷の手間
在庫を持つと、保管場所や梱包・発送の作業も増えます。自分で発送するのか、外部の倉庫に任せるのかによって、かかる費用と手間は大きく変わります。在庫を持つ前に、出荷の体制まで含めて考えておくことが大切です。
D2Cの価格設計は「生産方式ごと」に考える
受注生産は1回の生産枚数が少なくなりやすく、Tシャツ1枚あたりの単価は見込み生産より高くなる傾向があります。同じ価格で売る場合でも、生産方式によって残る利益は変わります。
価格を決めるときは、生産単価に加えて、決済手数料、送料、梱包資材、広告費などD2C特有の費用も含めて計算しておくのが一般的です。売価から逆算する考え方は上代・下代・原価率の決め方で説明しています。枚数ごとに単価がどう変わるかはロット数と原価はどう決まるのかを参考にしてください。
工場・OEM先に最初に伝えておくこと
D2Cで受注生産と見込み生産を組み合わせるなら、生産先にもその前提を伝えておくと、話が進めやすくなります。
- 最初は予約販売で、注文数が確定してから発注したいこと
- 枚数が少ない場合と多い場合、それぞれの単価の目安が知りたいこと
- 売れ筋は定番化して、同じ仕様で追加生産したい考えがあること
- 追加生産にかかる期間の目安
こうした情報があると、生産先も「小ロットで始めて、続けて作る取引になりそうだ」と見通しを持てます。最初の問い合わせで伝えるべきことはアパレルOEMの依頼方法にまとめています。
まとめ
- D2Cでは何枚作るかを自分で決めるため、生産設計が売上と在庫を左右する
- 見込み生産は即納できるが在庫リスクがあり、受注生産は在庫リスクを抑えられるが待ち時間がある
- 立ち上げ期は受注生産で需要を測り、売れ筋が見えてから定番だけ見込み生産に切り替える進め方が選ばれやすい
- 見込み生産に移る前に、追加生産の期間・同じ仕様での再現性・出荷体制を確認しておく
- 価格は生産方式ごとの単価とD2C特有の費用を含めて考える
どの商品を受注生産にし、どれを在庫として持つか。最初の1型の段階から一緒に整理しておくと、ブランドを続けやすくなります。