オリジナルTシャツをOEMで作ろうとして生地の話になると、「30番手の天竺です」「この生地は40番の双糸です」といった説明を受けることがあります。Tシャツの生地の「番手」の意味は、ひとことで言えば糸の太さを表す数字です。ただ、オンス(重さ)と違って手に取った印象と結びつけにくく、数字が大きいほど細い糸になるという逆向きの読み方も、最初は戸惑いやすいところです。ここでは、番手が何を表しているのか、オンスや編み方とどう関係するのか、そして番手の違いがTシャツの質感・プリント・コストにどう出てくるのかを整理します。オンスそのものの選び方はTシャツの生地は何オンスがいいかで別にまとめていますので、あわせて読むと全体がつながります。
番手は「糸の太さ」を表す数字
番手(ばんて)は、糸の太さを示す単位です。Tシャツに使われる綿糸では「綿番手」という数え方が使われるのが一般的で、一定の重さの綿から、どれだけの長さの糸が引けるかで決まります。同じ重さから長く引けるほど糸は細くなるので、番手の数字が大きいほど細い糸、小さいほど太い糸という関係になります。オンスは数字が大きいほど厚手ですが、番手は逆向きです。ここを押さえておくだけで、工場や生地商社との会話がかなり読みやすくなります。
表記は「30/-」「30/1」「30's」などいくつかの書き方があり、いずれも「30番手の単糸」を指しています。「40/2」と書かれていれば、40番手の糸を2本撚り合わせた「双糸(そうし)」という意味です。単糸と双糸の違いはあとで触れます。
Tシャツでよく出てくる番手の目安
会社や生地によって呼び方の境目は違いますが、Tシャツの企画で名前が挙がりやすい範囲を整理すると、次のような見方が一般的です。
| 番手の目安 | 糸の印象 | 生地になったときの傾向 | 使われやすい場面 |
|---|---|---|---|
| 10〜20番手あたり | 太く、ざっくりしている | 表面に凹凸感が出やすく、厚手で丈夫な印象になりやすい | ヘビーウェイトのTシャツ、ラフな表情を狙う企画 |
| 20〜30番手あたり | Tシャツの定番といえる太さ | 張りとやわらかさのバランスが取りやすい | いわゆる標準的なTシャツの多くがこの範囲に入ることが多い |
| 40番手以上 | 細く、なめらか | 表面がフラットで光沢が出やすく、薄手で軽い生地になりやすい | 上品な質感を狙う企画、インナー寄りの薄手Tシャツ |
あくまで目安で、同じ30番手でも糸の種類や編み方によって印象は大きく変わります。「番手が同じなら同じ生地」とは考えないほうが安全です。
単糸と双糸で、同じ番手でも性格が変わる
「30/1」のように1本の糸で編んだものを単糸、「30/2」のように2本の糸を撚り合わせたものを双糸と呼びます。双糸は撚り合わせることで糸の太さが増し、強度が上がる傾向があります。また表面が整いやすく、毛羽が出にくい印象になることが多いため、洗濯を重ねても表情が保たれやすいと説明されることがあります。
一方で、双糸は糸の工程が増えるぶん生地の価格が上がりやすく、選べる生地の種類や在庫も単糸に比べて限られることがあります。「双糸のほうが上」というより、狙う質感と予算のバランスで決める項目だと考えておくとよいでしょう。
番手とオンスは、別のものを測っている
ここが一番混同されやすい点です。オンスは生地の重さ、番手は糸の太さを表していて、どちらか一方で生地の性格が決まるわけではありません。生地の印象を決めているのは、おおまかに次の三つの組み合わせです。
- 糸の太さ(番手):太いほどざっくり、細いほどなめらか
- 編みの密度(度目):同じ糸でも、目を詰めて編むと張りが出て、粗く編むとやわらかく落ち感が出る
- 編み方:天竺・鹿の子・フライスのような編み地の違い
この三つの結果として出てくる数字がオンス(目付)です。そのため、たとえば同じ5.6オンス前後の天竺でも、太い糸をゆるめに編んだ生地と、細い糸を目を詰めて編んだ生地(いわゆる度詰め)では、手に取った印象がまったく違うことがあります。前者はざっくりと空気を含んだ感じに、後者は表面が締まって上品に見えやすい傾向があります。
| 組み合わせ | 手に取った印象 | 気をつけたい点 |
|---|---|---|
| 太い糸 × ゆるめの編み | ざっくり、やわらかい、カジュアル | 洗濯で目が動きやすく、寸法が変わりやすいことがある |
| 太い糸 × 詰めた編み | 厚手でしっかり、張りがある | 重くなり、暑い時期には向かない場合がある |
| 細い糸 × ゆるめの編み | 軽くてやわらかい、落ち感がある | 薄手になり、色によっては透けを感じることがある |
| 細い糸 × 詰めた編み(度詰め) | フラットで上品、きめが細かい | 生地の価格が上がりやすい |
見積書に「30/- 天竺 5.6オンス」のように並んでいれば、糸の太さ・編み地・重さがそろって書かれている状態です。逆にオンスしか書かれていない場合は、番手と編み地を一度聞いておくと、サンプルが上がったときに「思っていた質感と違う」となりにくくなります。
番手の違いが、Tシャツのどこに出るのか
質感と見た目
細い糸ほど表面がフラットになり、光を均一に反射するため、なめらかで光沢のある印象になりやすい傾向があります。太い糸は表面に凹凸ができ、マットでざっくりした表情になります。ブランドの世界観として「きれいめ」なのか「ラフ」なのかで、狙う番手の方向は変わってきます。
プリントの乗り方
表面がフラットな細番手の生地は、細い線や小さな文字が比較的きれいに出やすいと言われます。太番手のざっくりした生地では、凹凸の影響で線のエッジがわずかににじんだように見えることがあります。どちらが良い悪いではなく、デザインの細かさとの相性の話です。プリント方式との関係はシルクスクリーンと転写の違いで触れています。
洗濯後の変化
太い糸をゆるく編んだ生地は、洗濯で目が動いて縮みや型崩れが出やすいことがあります。細番手や双糸で目を詰めた生地は、寸法が安定しやすいと説明されることが多いものの、これも編みの密度や仕上げ加工に左右されるため、最終的にはサンプルを洗って確かめるのが確実です。
コスト
一般に、細い糸ほど紡ぐ工程に手間がかかるため糸の単価が上がりやすく、双糸はさらに撚り合わせる工程が加わります。また同じ厚みを細い糸で作ろうとすると、目を詰めて編む必要があるため、生地の価格が上がる方向に働くことが多いようです。「細番手=高級」と単純に言い切れるものではありませんが、番手を細くする指定をするときは、単価が動く可能性を頭に入れておくと見積もりが読みやすくなります。
番手とあわせて出てくる糸の言葉
番手の話をしていると、糸の種類を表す言葉も一緒に出てきます。すべてを覚える必要はありませんが、次の二つは見積書や仕様書で見かけることが多い項目です。
- コーマ糸とカード糸:綿の短い繊維を取り除く工程(コーミング)を通した糸がコーマ糸で、表面がなめらかで毛羽が少ない傾向があります。通さない糸がカード糸で、素朴な風合いになりやすく、価格は抑えやすいことが多いです。
- オープンエンド糸とリング糸:紡ぎ方の違いです。オープンエンド糸(空紡糸)は生産効率が高く、ざっくりと乾いた風合いになりやすいと言われます。リング糸は繊維がそろって強度と光沢が出やすい傾向があり、多くの定番Tシャツで使われています。
同じ30番手でも、コーマのリング糸とカードのオープンエンド糸では別物と言ってよいほど印象が変わります。番手だけを指定しても同じ生地にはならない、という理由のひとつがここにあります。
工場や生地商社に伝えるときの書き方
番手を理解したうえで生地を指定するときは、数字を並べるよりも「見本と、狙っている質感」を先に伝えるほうが話が早く進みます。そのうえで、確定した生地は次の項目をそろえて仕様書に書いておくと、量産でのずれを防ぎやすくなります。
- 編み地の種類(天竺など)
- 番手と単糸・双糸の別(例:30/-)
- 目付(オンス、または g/m2)
- 糸の種類(コーマ・カード、リング・オープンエンドなど、分かる範囲で)
- 混率と色番
- 生地の品番(生地商社の定番生地であれば、これが一番確実です)
「30番手くらいの、少し張りのある天竺」といった伝え方でも、経験のある依頼先なら候補を何点か出してくれることが多いです。候補が絞れたら、必ず同じ条件で生地見本を並べて触り、できれば一度洗ってから決めると、番手の数字と実際の質感が自分の中でつながっていきます。仕様書への落とし込み方は縫製仕様書の書き方にまとめています。
サンプルで確かめておきたい点
- 表面の見え方:狙った「きれいめ」「ラフ」の方向に合っているか。光の当たる場所で見比べる
- 透け:細番手・薄手の場合は、白や淡色で下着や肌が透けないか
- プリントの再現:細い線や小さい文字が、その生地の表面でどう見えるか
- 洗濯後:家庭で一度洗って、寸法・毛羽・表面の変化を確認する
サンプルにかかる費用や期間の考え方はサンプル制作の費用と期間で整理しています。
まとめ
Tシャツの「番手」は糸の太さを表す数字で、大きいほど細く、小さいほど太い糸です。オンスが生地の重さを表すのに対し、番手は糸の太さを表しており、そこに編みの密度と編み方が組み合わさって、手に取ったときの質感が決まります。同じオンスでも番手が違えば別の生地になりますし、同じ番手でも糸の種類や単糸・双糸の違いで印象は変わります。数字は会話を通じやすくするための共通言語として押さえつつ、最後は見本を触り、洗って確かめる。この順番で進めると、番手の指定が「なんとなく」ではなく、狙った質感に向けた判断になっていきます。