オリジナルTシャツをOEMで作ろうとすると、生地の説明のなかで「天竺(てんじく)」「鹿の子(かのこ)」「フライス」という言葉に出会います。Tシャツの生地の天竺・鹿の子・フライスの違いは、糸の太さや厚みではなく「編み方」の違いです。編み方が変われば、伸び方も、表面の見え方も、洗ったあとの戻り方も変わります。ここでは三つの編み地それぞれの性格と、Tシャツの企画でどう選び分けるかを整理します。
編み方が変わると、何が変わるのか
生地の話は「何オンスか」という重さの話になりがちですが、同じ重さでも編み方が違えば手に取った印象は別物になります。編み方によって変わるのは、おおまかに次の四つです。
- 伸び方:どの方向に、どのくらい伸びて、どのくらい戻るか
- 表面の見え方:フラットに見えるか、細かい凹凸やうねが出るか
- 張りとドレープ:体から離れて落ちるか、沿うか
- 洗ったあとの変化:縮み方や、首まわりの戻り方
Tシャツで使われる編み地は種類としてはもっと多くありますが、実際の相談で名前が挙がるのはこの三つが中心です。まずは三つの違いが分かれば、工場や生地商社との会話はかなり通じやすくなります。
天竺|Tシャツの標準になっている編み地
天竺は、いわゆる平編み(シングルジャージー)です。表側にはタテ方向のすじが並び、裏側はヨコ方向のループが見えるため、表と裏で見え方が違うのが特徴です。市販されているTシャツの多くはこの編み地で、「Tシャツの生地」と言われて多くの人が思い浮かべるのは天竺だと考えてよいと思います。
伸び方はヨコ方向によく伸び、タテ方向にはあまり伸びません。表面がフラットなのでプリントを乗せる面としても扱いやすく、色数の少ないロゴから写真調のデザインまで比較的選択肢が広く取れます。
気をつけたいのは、生地の端が表側に丸まりやすい(カーリング)という性質です。裁断や縫製の扱いに関わる部分なので発注者が直接どうこうする話ではありませんが、薄手にするほど出やすくなる傾向があるため、極端に薄い設定を狙うときは工場に実績があるかを確認しておくと安心です。
同じ天竺でも、編み目を詰めた「度詰め」にすると、目付が同じくらいでも張りが出て表面が締まって見えることがあります。数字が同じでも印象が変わる例のひとつです。
鹿の子|表面に細かい凹凸があり、さらっとした触感になりやすい
鹿の子は、編み目の一部に変化をつけて、表面に細かい凹凸を作った編み地です。目を近づけると、小さな粒が並んでいるように見えます。襟付きのカットソーの生地として見覚えのある方も多いかもしれません。
凹凸があることで肌に触れる面積が減り、天竺に比べてさらっとした触り心地になりやすい編み地です。空気が通る隙間ができるため、汗をかく場面で選ばれることがあります。表面に表情があるぶん、無地でも安っぽく見えにくいという評価をされることもあります。
一方で、細かいプリントとの相性は確認しておきたいところです。表面に凹凸があるため、細い線や小さい文字はエッジが少しにじんだように見えることがあります。デザインが細かい場合は、実際にその生地にプリントしたサンプルを見てから決めるほうが確実です。プリント方式ごとの違いはシルクスクリーンプリントと転写プリントの違いと選び方にまとめています。
フライス|タテにうねがあり、よく伸びて戻る
フライスはリブ編みの一種で、タテ方向にうねが並びます。表から見ても裏から見ても同じような見え方になるのが天竺との分かりやすい違いです。
最大の特徴は、ヨコ方向によく伸びて、しかも戻る力が強いことです。この性質があるため、Tシャツでは首リブ(襟ぐりの部分)に使われることが一般的です。着脱で引っ張られる場所なので、伸びたまま戻らない生地では形が保てないためです。
身頃そのものをフライスで作ることもあり、その場合は体に沿ったシルエットになりやすくなります。薄手だと身体のラインが出やすいため、誰に着てもらう企画かによって評価が分かれる部分です。端が丸まりにくいという扱いやすさもありますが、伸縮が大きいぶん、寸法の測り方をそろえておかないと検寸の数字がぶれやすくなります。
三つを並べて比べる
| 項目 | 天竺 | 鹿の子 | フライス |
|---|---|---|---|
| 編みの構造 | 平編み(シングルジャージー) | 編み目に変化をつけた組織 | リブ編み |
| 表面の見え方 | フラット。表裏で違う | 細かい凹凸がある | タテのうね。表裏が似ている |
| 伸び方 | ヨコによく伸びる | 天竺に近いが、やや張りが出やすい | ヨコによく伸び、戻る力が強い |
| 触り心地の傾向 | なめらか | さらっとしている | 体に沿う |
| プリントの乗り方 | 面がフラットで扱いやすい | 細かい線は確認しておきたい | 伸びるため位置ずれの確認を |
| Tシャツでの使われ方 | 身頃の定番 | 身頃(さらっとした質感を狙うとき) | 首リブ、体に沿わせたい身頃 |
どれが優れているという表ではありません。同じデザインでも、着てほしい場面が変われば選ぶ編み地は変わります。
「オンス」と編み方は、別の話として考える
見積もりの段階では「5.6オンス」のように重さの数字で話が進むことが多いのですが、重さは編み方を教えてくれません。5.6オンスの天竺と5.6オンスの鹿の子は、数字の上では同じでも、手に取れば別の生地です。
そのため、生地を指定するときは「編み方」と「目付(オンスまたはg/m2)」の二つをセットで伝えるほうが行き違いが減ります。重さの読み方についてはTシャツの生地は何オンスがいい?オンス(厚み)の選び方で詳しく整理しています。
洗ったあとの変化も、編み地によって出方が違う
編み地は織物に比べて伸縮する構造をしているため、洗濯や乾燥で寸法が動きます。どのくらい動くかは編み方だけでなく、糸・加工・洗い方でも変わるので一律には言えませんが、次の点は生産前に確認しておく価値があります。
- 洗濯後の縮み:どの方向にどれくらいまでなら許容できるかを、先に工場と共有しておく
- 首まわりの戻り:首リブの編み地と縫い方で差が出やすい部分
- 表面の変化:鹿の子の凹凸感や度詰めの張りが、洗いを重ねてどう変わるか
サンプルが上がったら、一度家庭で洗ってから判断するのがおすすめです。あわせて、販売するTシャツには表示が必要になるため、Tシャツの洗濯表示(品質表示)の作り方も生産前に確認しておくと後戻りが減ります。
サンプルで確かめておきたい四つの点
- 光の下での表情:鹿の子の凹凸や度詰めの張りは、写真より現物のほうが分かります
- 透け:白や淡い色は、編み地と厚みの組み合わせで印象が変わります
- プリントを乗せた状態:生地単体で判断せず、デザインを乗せた状態で見ます
- 着たときの落ち方:ハンガーに掛けた状態と着た状態では見え方が変わります
工場に伝えるときは、編み地の名前より「どう着てほしいか」から
編み地の名前を指定できるに越したことはありませんが、最初の相談では名前を決めきれていなくても問題ありません。むしろ次のような伝え方をするほうが、候補を出してもらいやすくなります。
- 誰が、どんな場面で、どの季節に着るのか
- 売価または製造費の上限
- 枚数と、リピートの見込みがあるか
- デザインの状態(色数、細かい線があるか)
- 手元に「こういう風合いにしたい」という現物があるか
最後の項目はとくに効きます。手元のTシャツを一枚渡して「これに近い風合いで」と伝えられると、言葉で説明するより早く話が進むことがあります。相談時の伝え方はアパレルOEMの依頼方法|最初の問い合わせで伝えるべきことに、枚数の考え方はTシャツOEMは何枚から作れる?小ロット対応の実際にまとめています。
まとめ
- 天竺・鹿の子・フライスの違いは、糸や厚みではなく編み方の違い
- 天竺は表面がフラットで、Tシャツの身頃の定番。プリントを乗せやすい
- 鹿の子は表面に細かい凹凸があり、さらっとした質感になりやすい。細かいプリントは確認を
- フライスはよく伸びて戻るため、首リブに使われることが一般的
- オンス(重さ)だけでは編み地は決まらないので、編み方と目付はセットで伝える