既製の無地Tシャツ(ありボディ)にプリントを入れて、首のタグを自分のブランドのものに付け替える。Tシャツのタグ付け替えは、生地から起こすフルオーダーに比べて少ない枚数と短い準備期間で「自分のブランドの服」の形にできるため、ブランドの立ち上げ時や、まず1型を試したい段階でよく選ばれる方法です。ただ、タグの付け替えは「ネームを縫い付けるだけ」に見えて、元のタグの外し方、ネームの種類、品質表示(洗濯ネーム)の扱いといった、先に知っておかないと手戻りになる点がいくつかあります。ここでは、Tシャツのタグ付け替えでブランド化するときの手順と、首ネーム・品質表示の実務を整理します。
タグ付け替えで「ブランドの服」になる、とはどういうことか
Tシャツの首の内側についているタグには、大きく分けて二つの役割があります。ひとつはブランドを示す首ネーム(ブランドネーム)、もうひとつは法律で表示が求められている品質表示(洗濯ネーム)です。ありボディを仕入れた時点では、どちらもボディメーカーのものが付いています。
タグ付け替えとは、この二つを自分のブランドの表示に置き換える作業です。首ネームを変えるだけなら見た目の話で済みますが、品質表示を変えると「誰がこの製品の表示に責任を持つか」が自分のブランドに移ることになります。この点があるため、タグ付け替えは装飾の話ではなく、製品を自社の名前で世に出すための手続きだと考えておくと判断がぶれにくくなります。
付け替える前に確認しておきたい三つのこと
1. ボディメーカーの規約で、タグの付け替えが認められているか
無地ボディのメーカーやブランドによって、自社のタグを外して別のネームを付けることを認めているところと、条件を設けているところがあります。多くの卸向けボディはOEM用途を前提にしているため付け替えを想定していることが多いようですが、すべてのボディで同じ扱いというわけではありません。仕入れ先のカタログや利用条件を確認し、分からなければ販売代理店や依頼先の加工会社に聞いておくと安心です。
2. 元のタグが「縫い込み」か「プリント(タグレス)」か
元のタグが布製で首の縫い目に挟み込まれている場合、ほどいて外し、新しいネームを縫い付ける形になります。一方、近年のボディには首の内側に直接印刷したタグレス仕様のものも多く、こちらは物理的に外せません。タグレスのボディでブランド化したい場合は、印刷の上に新しいネームを縫い付けて隠す、ボディの選定段階で縫い込みタグのものを選ぶ、といった判断が必要になります。ここは仕入れる前に確認しておきたい点です。
3. 品質表示の内容を、自分のブランド名で作り直す準備があるか
組成(綿100%など)や取扱い記号はボディメーカーの表示と同じ内容になることが多いものの、表示者名と連絡先は自分のブランド(会社または個人事業)に変わります。ここを元のタグのままにして販売すると、表示の責任者が実態とずれた状態になります。表示に何を入れるかはTシャツの洗濯表示(品質表示)の作り方と法律上の注意点で整理しているので、付け替えを検討する段階で一度目を通しておいてください。
首ネームの種類と、ありボディとの相性
首に付けるブランドネームには、いくつかの作り方があります。ありボディへの付け替えという前提で、それぞれの向き不向きを並べます。
| 種類 | 特徴 | 付け替えでの向き不向き |
|---|---|---|
| 織りネーム | 糸で織ってロゴや文字を表現する。厚みと立体感があり、ブランドらしい印象になりやすい | 縫い付けで対応でき、最も一般的。細かい文字は糸の太さの都合で潰れることがあるため、デザインは太めの線が扱いやすい |
| プリントネーム(サテンなどに印刷) | 薄く柔らかい。細かい文字や複数行の情報を入れやすい | 縫い付けで対応。品質表示と一体にして1枚にまとめる使い方もある |
| 転写(タグレス) | ボディに直接ロゴを転写する。肌あたりがなく、着心地を優先するブランドで選ばれる | 元のタグが縫い込みなら外してから転写できる。元がタグレス印刷だと転写を重ねられない場合が多く、ボディ選びから考える必要がある |
どれが正解というものではなく、ブランドの見せ方と、ボディの仕様と、あとで触れる最低ロットとの兼ね合いで決まります。最初の1型では織りネームで首ネームを付け、品質表示はプリントネームで脇に付ける、という組み合わせが分かりやすい形のひとつです。
ネームの付け方は「縫い付け」か「転写」か
付け替え作業そのものは、大きく二つです。
- 縫い付け — 元のタグを外したあと、首の後ろ中心の縫い目にネームを挟み込む、または縫い目の上に載せて四辺や上下を縫い留める。ミシンでの作業になるため、枚数がまとまるほど1枚あたりの手間は下がりやすい
- 転写 — 熱でロゴを首の内側に圧着する。縫う工程がないぶん段取りは軽いが、転写できる生地とできない生地があり、洗濯を繰り返したときの持ちは方式と生地の相性で変わる
元のタグを外す工程は見落とされがちですが、縫い目をほどく際に首の縫製まで傷めると、そのTシャツは使えなくなります。自分で数枚を試す分には問題になりにくいものの、ある程度の枚数になる場合は、タグ外しから縫い付けまでを加工会社やOEM会社に一括で頼むほうが仕上がりが揃いやすいのが実際のところです。プリント加工と同じ依頼先で受けてもらえることも多いので、プリントの相談時に「ネームの付け替えもお願いできますか」と一言添えてみてください。依頼先の探し方はオリジナルTシャツを製作できる工場の探し方と依頼のステップで整理しています。
品質表示(洗濯ネーム)は「元のを流用」ではなく「作り直す」
タグ付け替えでいちばん迷いやすいのがここです。ボディメーカーの洗濯ネームをそのまま残しておけばよいのでは、と考える方も多いのですが、次の理由で作り直すのが基本になります。
- 表示者名が変わる — 販売する主体が自分のブランドである以上、表示者名と連絡先は自分のものになります。ボディメーカーの表示者名のままでは実態と合いません
- 加工で内容が変わることがある — プリントの種類によっては、アイロンの扱いや漂白の可否など、元のボディの取扱い記号がそのまま当てはまらなくなる場合があります。プリント方式を決めた時点で、取扱い記号を見直す必要があります
- 首ネームと同時に外れる — 元の品質表示が首ネームと一体になっているボディも多く、首ネームを外した時点で品質表示も無くなります
組成表示については、ボディメーカーが公開している混率の情報を根拠にするのが一般的です。ボディの品番ごとに混率が違うことがあるため、仕入れたボディの品番と表示の内容がずれていないかを確認したうえで作成します。表示の作成そのものについては、当社(Airera)で公開している洗濯ネーム作るくんで、素材と混率を入力して絵表示を選び、印刷用データとして出力できます。自社のツールなので、その前提でご覧ください。
最低ロットは「ボディ」「加工」「ネーム」の三つで別々に決まる
タグ付け替えでブランド化する場合、枚数の下限は一か所で決まるわけではありません。
| 項目 | 下限を決めている要素 | 少量で始めるときの考え方 |
|---|---|---|
| ボディ | 仕入れ先の販売単位(1枚から買えるところもあれば、カラー・サイズごとに単位があるところもある) | 定番品番・定番色を選ぶと単位が小さいことが多い |
| プリント・付け替え加工 | 加工会社の段取り費用と受付単位 | 版を使う方式は枚数が少ないと1枚あたりが上がりやすい。方式の選び方はシルクスクリーンと転写の違いを参照 |
| 首ネーム・洗濯ネーム | ネームメーカーの製作ロット。織りネームはまとまった枚数が単位になることが多い | ネームは何型かで使い回せるため、Tシャツの枚数より多く作って在庫しておく考え方が一般的 |
三つのうち、Tシャツの枚数と噛み合いにくいのがネームです。Tシャツは数十枚なのにネームの単位はそれより多い、という状況はよく起きます。ただ、ネームはブランド名さえ変わらなければ次の型でもそのまま使えるため、「最初の1型の枚数」ではなく「ブランドとして当面作る枚数」で考えると判断しやすくなります。Tシャツ自体の枚数の考え方はTシャツOEMは何枚から作れるかで触れています。
織りネームの製作についても、当社(Airera)でブランドネーム作るくんというサービスを公開しています。ブラウザ上でデザインを作るか入稿データを渡して、概算を見たうえで申し込める形です。こちらも自社のサービスであることを前提にご覧ください。
タグ付け替えでブランド化するときの進め方
実務としては、おおむね次の順序で進むことが多くなります。
- 1. ボディを決める — 生地の厚み・編み地・シルエットに加えて、元のタグが縫い込みかタグレスか、付け替えが認められているかを確認する。生地の見方はTシャツの生地は何オンスがいい?と天竺・鹿の子・フライスの違いが参考になります
- 2. 首ネームの種類とデザインを決める — 織り・プリント・転写のどれにするかと、サイズ。首の後ろ中心に収まる大きさで、細かすぎない線にする
- 3. 品質表示の内容を確定する — ボディの混率を根拠に組成を書き、プリント方式に合わせて取扱い記号を決め、表示者名と連絡先を自分のブランドにする
- 4. ネームを手配する — 首ネームと洗濯ネームを、Tシャツの枚数より多めに発注する。納期は数週間かかることが多いため、Tシャツの加工日程より先に動かす
- 5. 加工を依頼する — プリントとタグ付け替えを同じ依頼先にまとめ、ネームの付け位置(首の後ろ中心・脇の縫い目など)と向きを仕様として伝える
- 6. 上がりを確認する — ネームの位置と傾き、糸の始末、洗濯後に表示が読めるかを確認してから販売に回す
全体の日程は、ネームの製作期間がボトルネックになりやすい点を押さえておくと組みやすくなります。着用日や販売日から逆算する考え方はTシャツOEMの納期はどれくらい?で整理しています。
まとめ
Tシャツのタグ付け替えは、ありボディを自分のブランドの製品にするための現実的な方法です。ただし、ボディメーカーの規約・元のタグの仕様・品質表示の作り直しの三つを先に確認しておかないと、仕入れたあとに使えないボディが出たり、表示の責任者がずれたまま販売したりすることになります。首ネームは見せ方の話、品質表示は責任の話、と分けて考え、ネームはTシャツの枚数ではなくブランドとして当面作る枚数で手配する。この整理ができていれば、最初の1型は少ない枚数からでも十分に形になります。