アパレルの生産を工場やOEM会社に頼むと、納品の前に「検品」と「検針」という二つの工程の名前が出てきます。どちらも品質チェックの一種なので同じもののように聞こえますが、アパレルの検品と検針は目的も方法もまったく別の工程です。検品は「商品として売れる出来になっているか」を人の目で確かめる作業で、検針は「針などの金属片が残っていないか」を機械で調べる作業です。ここではTシャツの生産を例に、検品と検針それぞれで何が行われているのか、発注する側が事前に決めておくと後で困らない点を整理します。
検品と検針は、目的がまったく違う
まず二つの違いを一覧にします。
| 検品 | 検針 | |
|---|---|---|
| 目的 | 商品としての出来を確認する(品質) | 金属異物の混入を防ぐ(安全) |
| 方法 | 人の目と手、メジャーで確認する | 検針機(金属探知機)に通す |
| 見つけるもの | 寸法のずれ、縫い不良、汚れ、プリントの欠け、表示の誤り、数量の過不足など | 折れた縫い針、ミシン針の破片、まち針、ホチキスの針など |
| 行う場所 | 縫製工場、OEM会社、検品専門会社など | 縫製工場、検品専門会社など(検針機のある場所) |
| 結果の扱い | 不良品を除外・手直しし、良品だけを納品する | 反応した製品を取り除き、必要に応じて検針済みの証明を出す |
検品は「良い商品かどうか」、検針は「危険なものが入っていないか」を見ています。検品を丁寧にしても検針の代わりにはなりませんし、その逆も同じです。特に検針は、針が1本残っていただけで着る人がけがをする可能性があるため、量販店や百貨店などの納品先では検針済みであることを条件にしているケースが多く見られます。
検品では何を見ているのか(Tシャツの場合)
検品の中身は依頼先によって差がありますが、Tシャツであれば、おおむね次のような項目が確認されることが一般的です。
- 外観 — 汚れ、シミ、糸くず、生地のキズや編みムラ、色ムラがないか
- 寸法 — 身幅・着丈・袖丈・肩幅などを平置きで測り、指定寸法との差が許容範囲に収まっているか
- 縫製 — 縫い目の飛び、ほつれ、糸の始末、首リブの波打ち、裾や袖口のステッチの曲がりがないか
- プリント・刺繍 — 位置のずれ、かすれや欠け、色の違い、インクのにじみがないか
- 付属と表示 — 首ネーム・洗濯ネーム・下げ札が指定どおりの内容と位置で付いているか
- 数量と仕分け — サイズ・色ごとの枚数が発注どおりか、袋入れや畳み方が指示どおりか
このうち寸法と表示は、発注者側が基準を用意していないと工場側では判断のしようがない項目です。寸法は「何cmまでのずれなら合格とするか」という許容差、表示は「どの内容の洗濯ネームを、どこに付けるか」を事前に共有しておく必要があります。洗濯ネームの内容そのものについてはTシャツの洗濯表示の作り方の記事で整理しています。
全数検品と抜き取り検品
検品には、納品する全枚数を1枚ずつ見る「全数検品」と、一定の割合を取り出して確認する「抜き取り検品」があります。全数検品のほうが確実ですが、その分の手間が費用や納期に乗ります。どちらにするかは、枚数や販売先の要求水準、商品の単価によって判断が分かれるところで、Tシャツのように構造が単純な商品では、工場内での縫製中のチェックに加えて、最終工程で全数を軽く通す形が取られることも多いようです。見積もりの段階で「検品は全数ですか、抜き取りですか」と一言聞いておくと、認識のずれを防げます。
検針は「安全」のためのチェック
縫製の工程では、ミシン針が折れることがあります。折れた針の先端が製品の中に残ったまま出荷されると、着た人の肌を傷つける事故につながるため、これを防ぐのが検針です。検針では製品を検針機に通し、金属に反応した製品を取り除きます。あわせて、工場側では「折れた針は先端まで全部そろえて回収し、記録に残す」という折れ針管理を行っているのが一般的で、検針機と折れ針管理の両方で針の混入を防ぐ形になっています。
検針機には、ベルトコンベアに製品を流して通すタイプと、手に持って製品にかざすハンディタイプがあります。まとまった枚数を確実に通すならコンベア式のほうが向いており、検品専門会社や一定規模の縫製工場にはこのタイプが置かれていることが多いようです。
Tシャツは検針しやすい商品
検針機は金属に反応する仕組みなので、金属のボタンやファスナー、金具付きの下げ札などが付いている商品は、そのままでは検針にかけられません。金属付属の部分だけ避ける、付属を付ける前に検針する、といった段取りが必要になります。その点、Tシャツは金属の付属がほとんどないため、完成品をそのまま検針機に通せる、扱いやすい商品だといえます。ただし、下げ札を留めるピンや安全ピン、ホチキスで留めた札などが付いていると反応してしまうので、検針のあとに付ける段取りにするか、金属以外の留め具を使うといった配慮が要ります。
検針証明書が求められることがある
納品先によっては「検針済み」であることを書面で求められることがあります。この場合は、検針を行った工場や検品会社が発行する検針証明書(検針済証明)を添えて納品する形になります。自社のオンラインストアだけで販売するなら求められないことが多いですが、卸先や催事の主催者が条件にしている場合もあるため、販売先が決まっているなら、その販売先が検針証明を必要としているかを先に確認しておくと安心です。
検品・検針は、どこで誰が行うのか
検品と検針を行う場所は、生産の形によって変わります。
- 縫製工場の中で行う — 縫い上がりの段階で工場が検品・検針まで済ませて出荷する形。工場に検針機があることが前提になります
- OEM会社が行う — 工場から上がった製品をOEM会社が受け取り、自社または提携先で検品・検針してから納品する形
- 検品専門会社に出す — 検品・検針を専門に請け負う会社に製品を送り、良品だけを納品先へ送ってもらう形。海外生産の場合、輸入後に国内の検品会社を通すことも多くあります
どの形でも、検品・検針の費用が見積もりに含まれているのか、別建てなのかは依頼先によって扱いが分かれます。「検品込み」と書かれていても、外観の確認だけで検針は含まれていない、という場合もあるので、検品と検針を分けて確認しておくと確実です。海外生産で輸入後の検品を挟む場合は、その分の日数も納期に加わります。国内と海外の生産の違いについてはアパレルの国内生産と海外生産の記事で、納期の考え方についてはTシャツOEMの納期の記事でそれぞれ整理しています。
発注する側が、先に決めておきたいこと
検品・検針は依頼先が行う工程ですが、その基準を決めるのは発注者です。次の4点を依頼の段階で伝えておくと、納品後の「聞いていない」を減らせます。
- 合格の基準 — 寸法の許容差、プリント位置のずれをどこまで許容するか、どの程度の汚れやキズをB品とするか
- 検品の範囲 — 全数か抜き取りか。抜き取りなら何割程度を見るのか
- 検針の要否と証明書の要否 — 販売先が求めているか。求めているなら証明書の発行を依頼できるか
- 不良が出たときの扱い — 手直しして納品するのか、良品だけを納めて枚数不足分をどうするのか、B品の扱いはどうするのか
合格の基準は、量産前サンプルを確認した時点で決めておくのが自然な流れです。「このサンプルと同じ出来なら合格」という現物基準を共有しておくと、言葉だけで基準を伝えるよりも認識がそろいやすくなります。サンプルの確認についてはサンプル制作の費用と期間の記事、生産全体の流れはサンプルから量産までの流れの記事で扱っています。
納品後に、自分でもできる簡易チェック
依頼先の検品・検針を通ったあとでも、受け取った時点で自分の目でも確認しておくと、万一の見落としに早く気づけます。全数を細かく見る必要はなく、次の程度で十分です。
- サイズ・色ごとの枚数が納品書と合っているか数える
- 各サイズから数枚ずつ取り出し、身幅と着丈を測って指定寸法と比べる
- プリントの位置と色を、承認したサンプルと並べて見比べる
- 首ネーム・洗濯ネームの内容と付け位置を確認する
- 気になる点があれば、写真を撮って日付とともに依頼先に連絡する
納品後しばらく経ってからの指摘は、輸送中や保管中に起きたものと区別がつきにくくなります。受け取ったらなるべく早く確認し、問題があれば写真つきで伝えるのが、依頼先とのやり取りをこじらせないコツです。
まとめ
- 検品は「商品としての出来」を人の目で確認する工程、検針は「金属異物の混入」を機械で調べる工程で、目的がまったく違う
- 検品の合格基準(寸法の許容差、B品の定義)は発注者が決めて伝えるもの。量産前サンプルを現物基準にすると認識がそろいやすい
- 検針はTシャツと相性がよいが、金属の留め具付きの下げ札などは検針後に付ける段取りにする。販売先が検針証明を求めるかを先に確認する
- 見積もりでは検品と検針を分けて、含まれているか・全数か抜き取りか・費用は別建てかを確認しておく