医療機関、介護施設、美容サロン、保育園、フィットネスクラブ。スタッフに統一のウェアを着ていただく事業者にとって、スクラブや白衣は「消耗品」でありながら「その場の第一印象を決めるもの」でもあります。
既製品を購入されている事業者から、オリジナル製作のご相談をいただくことが増えています。この記事では、業務用ウェアをOEMで作る場合に、既製品と何が変わり、どこに注意すべきかを整理します。
既製品からオリジナルに切り替える理由
ご相談の入口はおおむね次の4つに分かれます。
| きっかけ | 背景 |
|---|---|
| 色・デザインの自由度 | 既製品の色数では、内装やブランドカラーに合わない |
| 耐久性への不満 | 洗濯頻度が高く、色落ち・毛玉・首まわりの伸びが早い |
| 追加発注のしにくさ | 入退職のたびに数枚だけ欲しいが、廃番や在庫切れで揃わない |
| コスト | 拠点数・人数が増え、既製品の単価では総額が膨らんできた |
このうち「追加発注のしにくさ」は、意外に見落とされがちですが影響が大きい項目です。既製品は数年でモデルチェンジや廃番が起こるため、途中から色味や形の違うものが混ざります。統一感を保つことが目的だったはずが、結果的に崩れていくという状況です。
業務用ウェアで特に確認すべき仕様
1. 生地 — 洗濯回数を前提に選ぶ
業務用ウェアと一般のアパレルで最も大きく違うのが、洗濯の頻度です。週に何度も洗い、施設によっては高温乾燥や業務用洗濯機にかけられます。
ここで一般のカットソー用の生地を選んでしまうと、半年で見た目が変わります。ポリエステル混率を上げる、目付(生地の重さ)を確保する、といった判断が必要です。「肌ざわりの良さ」と「洗濯耐久性」は多くの場合トレードオフになるため、どちらを優先するかを先に決めておくと話が早く進みます。
2. 動きやすさ — 業務の動作に合わせる
同じスクラブでも、必要な可動域は業務によって違います。介護のように腕を大きく上げ、腰をかがめる動作が多い現場と、受付のように立位が中心の現場では、適した仕様が異なります。
脇下のマチ、肩の切り替え位置、身幅と着丈のバランス。このあたりはサンプル段階で実際に着て動いていただくのが最も確実です。図面上では判断できません。
3. ポケット — 何を入れるかを具体的に
ペン、スマートフォン、電子カルテ端末、ハサミ、メモ。現場で実際に持ち歩くものを挙げていただくと、位置と深さが決まります。「ポケットは多めに」という指定だけで進めると、使わないポケットが増えて生地が余り、シルエットが崩れます。
4. 名入れ — 刺繍とプリントの使い分け
ロゴやスタッフ名を入れる場合、刺繍とプリントで耐久性と費用が変わります。洗濯頻度の高い業務用では、刺繍のほうが長持ちする一方、細かい文字やグラデーションには不向きです。ロゴの形状によって適する方式が変わるため、デザインが決まった段階でご相談いただくのが確実です。
5. サイズ展開 — 在庫を抱えない配分
スタッフの体格が幅広い場合、サイズを増やしたくなります。ただしサイズを1つ増やすと、その分の在庫リスクが乗ります。
ユニセックス設計で展開数を抑える、あるいは丈の調整幅を持たせる仕様にするなど、展開数を増やさずに対応範囲を広げる方法があります。現在お使いのウェアのサイズ別の実績枚数がわかれば、それをもとに配分を設計できます。
ロットと費用の考え方
「何枚から作れるか」は最も多いご質問です。結論から言うと、生地を新規に手配するか、既存の生地を使うかで下限が大きく変わります。
生地は反(たん)という単位で仕入れるため、新規に色を作る場合はその最低単位が実質的な下限になります。一方、既に流通している生地の色から選ぶ場合は、この制約が緩みます。色を完全に指定したいのか、近い色で妥協できるのかによって、必要枚数が変わるということです。
費用面では、本生産とは別に初期費用(パターン作成・仕様書作成・サンプル制作)が発生します。これは枚数に関係なくかかるため、初回だけは1枚あたりの負担が重く見えます。ただし2回目以降は同じ型紙を使えるため、追加発注時の単価は下がります。
拠点数が多く、継続的に補充が発生する事業者ほど、この構造は有利に働きます。初回の総額ではなく、数年単位で見た1枚あたりのコストで比較していただくのが実態に近い判断になります。
進め方と期間の目安
おおまかな流れは通常のアパレルOEMと同じです。詳細はサンプルから量産までの流れもあわせてご覧ください。
- ヒアリング — 現在お使いのウェアの不満点、業務内容、希望枚数
- 仕様の検討・見積り — 生地と仕様を提案し、概算費用を提示
- サンプル制作 — 実際に着て動いていただき、修正点を洗い出す
- 本生産・納品 — サンプル承認後に量産
初めての製作では、打ち合わせ開始から納品まで2〜4ヶ月程度を見ておくと無理がありません。制服の切り替えは年度替わりや開院・開園のタイミングに合わせることが多いため、その日から逆算して動き出す必要があります。
相談時にお伝えいただきたいこと
すべて決まっている必要はありません。「未定」でも構いませんが、次の情報があると初回から具体的な話ができます。
- 現在お使いのウェア — 商品名や写真。何が不満かがわかると提案の精度が上がります
- 着用人数と拠点数 — 初回枚数と、今後の補充頻度の見当がつきます
- 業務内容 — 必要な可動域とポケットの仕様に直結します
- 洗濯の方法 — 個人洗濯か、業務用洗濯機か、リース業者か
- 希望時期 — 逆算してスケジュールを組みます
- 予算感 — 1枚あたりの目安があると、実現できる仕様を逆算して提案できます
特に現在お使いのウェアの写真は、言葉では伝わりにくい部分を一度に共有できるため効果的です。